葛西臨海水族園「東京の海」エリアの「浮遊生物」コーナーでは、クラゲなどの浮遊生物を展示しています。浮遊生物とは、波や流れに自力で逆らう遊泳力をもたず、海の中をただよって生活する生き物のことです。
悠々として見える姿はとても魅力的で、人気の高いクラゲですが、広い海を流れにまかせてただよっているため、狙って採集することがむずかしい生き物です。そのため、クラゲ採集の少ないチャンスを逃すまいと、出張先の漁港や水族園の前にある「西なぎさ」を訪れたときには目を凝らして探しますが、元気なクラゲの姿はあまり見かけません。
そこで、時にはクラゲを求めて船で海へと繰り出します。よく晴れて波のない日は、水面下にただようクラゲを確認しやすいので、絶好のクラゲ採集日和です。潮の流れや水面を見ながら、クラゲがいそうな場所を探します。
こまめに船を止めながらクラゲを探す
クラゲは1個体でいるよりも複数でいるのを発見することが多い印象です。とくに流れがぶつかりあう「潮目」には多くのクラゲがたまっていることがあり、クラゲ探索のポイントです。この日は運よく次々と流れてくるミズクラゲを見つけることができました。
海が穏やかであれば水面下のクラゲを目で見ることができる
クラゲは海水ごとすくい上げることが重要です。そうすればクラゲのデリケートな体を傷つけず、さらにカサの中に気泡が入ることも防げるからです。カサの中に気泡が入ってしまうと自力で出すことができず、その部分から体が解けてしまうのです。
そこで、すくうときにはバケツや特製の網を使用します。この網はビニール部分と網部分に分かれているので、水ごと簡単にすくえるクラゲ採集の頼れるパートナーです。
| | |
クラゲはとてもデリケートな生き 物なので、慎重にすくいあげる | クラゲ採集に使う網。ビニールの部分と網の部 分があり、水ごとすくうことでクラゲへのダメ ージを少なくできる。スタッフ発案の特注品 |
しかし海に出て探しても、丸一日クラゲに出会えないこともあります。水槽内をただようクラゲの姿はゆったりとしていて、見る側の心も落ち着く生物ですが、一方、海での気ままな生活に、採集するスタッフは振り回されがちです。
〔葛西臨海水族園調査係 小川悠介〕
(2020年03月13日)