葛西臨海水族園では、深海でくらすタコのなかま、メンダコの長期飼育に取り組んでいます。これまでの経験から、メンダコは明るい場所では長く飼えないこと、そして暗い水槽内では意外に活動的であることがわかってきました。
そこで水槽を暗い環境に置いて長期飼育に取り組むとともに、高感度カメラで撮影してリアルタイムで放映する「リアルタイムモニター展示」によってメンダコの生態展示に挑戦しました。今回の展示日数は23日間となりました。その期間中、メンダコがえさを食べるときの不思議なようすを撮影することができました。
※現在、メンダコは展示しておりません。
えさを嫌がるイヤイヤメンダコ
水槽に慣れたであろう頃、他の個体が食べたと記録の残っている解凍アミエビを与えました。すると、体の上に落ちたアミエビを、口のある体の下に一度は持っていったものの、まるで「イヤ!」と言っているかのように腕を使って振り払うようにして、その場を離れるように泳ぎ出してしまいました。どうやらこの個体は解凍アミエビがお気に召さなかったようです。初めは食べそうなようすだったので期待しましたが、簡単にはいかないと痛感しました。
【動画】えさを嫌がるメンダコ
えさを食べている?ビヨンビヨンメンダコ
次に試したのは生きているヨコエビです。採集直後のメンダコを解剖すると、胃からヨコエビの殻が出てくることがあります。そこでヨコエビを与えてみたところ、水槽内のメンダコ2個体がどちらも見たことのない動きをしました。腕を少し持ち上げて自分の体の下にヨコエビを誘い入れるようにしたり、素早く浮き上がっては着地する動きを繰り返し(効果音をつけるならビヨンビヨン?)、体の下にヨコエビを集めるようにしたりする行動が見られました。
【動画】えさに対して不思議な動きを見せるメンダコたち
この時点では食べたかどうか確証がもてませんでしたが、残念ながら死んでしまったメンダコを後日解剖すると、胃の中にヨコエビの殻が入っていました。こんな動きを見せながらえさを食べるとは予想していなかったので、このビヨンビヨンの動きは衝撃的でした。
リアルタイムモニター展示ではメンダコを直接見ることはできません。しかし、メンダコがくらす深海と同じように水槽内を暗くすることで本来の動きを引き出すことができます。来園者の方がモニターごしに見るリアルタイムのメンダコのようすは、もしかすると世界初観察の行動かもしれません。今後も長期飼育に挑戦しながら研究を続け、メンダコの生態解明に取り組んでいきます。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 小味亮介・村松茉由子〕
(2019年07月05日)
(2019年07月06日:現在展示していない旨を追記)