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糸が目をひくイトヒキアジ
 └─2019/02/01

 葛西臨海水族園の「東京の海」エリアにある「伊豆七島の海2」水槽で2018年11月、イトヒキアジの展示を始めました。黄色や青色など、色鮮やかな魚種が多い水槽の中、銀色の体を輝かせながら群れで泳ぐようすはひときわ目をひきます。


 イトヒキアジは世界各地の暖かい海に分布し、成魚は全長1メートルほどに成長します。水槽の個体はまだ若く、「イトヒキ」アジの名前の通り、背びれと尻びれの一部が「糸」のように長く伸び、まさしく糸を引くように泳ぎます。

 しかし成魚になると、ひれの糸が短くなり、やがてなくなってしまいます。糸状に伸びたひれの役割は、大型の魚に食べられないないよう毒をもつクラゲのまねをしているとか、仲間どうしの確認に使われているなど諸説ありますが、いまひとつ説得力に欠けるようです。

 現在展示しているイトヒキアジは姿形がおもしろく、また、私自身が採集に関わった魚なので、ぜひ展示をしたい!と考えていました。しかし同時に、「伊豆七島の海2」水槽にいる他の魚と共存できるか、いくつかの心配がありました。

 実際に水槽に入れてみると、イトヒキアジは隅でおとなしくえさを食べ、他の魚との競り合いも見られませんでした。これで一安心、というところでしたが、2か月経つと水槽にだいぶ慣れてきたようで、最近は他の魚を押しのけてえさを食べるようになってきました。今後どう飼育し管理していくか、飼育係の腕が試される水槽となりそうです。

 菱形の体に伸びた「糸」。姿だけでも十分おもしろいイトヒキアジですが、水槽内の他の魚との関係に注目して観察し、長い「糸」にどのような役割があるのか、考えてみるのも楽しいと思います。「糸を引く」姿は若魚のときにしか見ることができないので、ぜひお早めにご来園ください!

〔葛西臨海水族園飼育展示係 太田智優〕

(2019年02月01日)


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