葛西臨海水族園の「世界の海」エリアにある「インド洋I」水槽では、イシヨウジという魚を展示しています。暖かく浅い海にくらしていて、サンゴ礁や岩礁域で見られます。細長い体には白や茶色の縞模様があり、砂地では目立ちません。すぐには見つけられないかもしれませんが、砂の上を這うように泳いでいることが多いので、注意深く観察してみてください。水中に漂っている小さなプランクトンを食べているようすも見ることができるかもしれません。
イシヨウジをはじめとするヨウジウオのなかまはオスとメスのペアでくらしていることが多く、メスがオスの腹部にある育児嚢(いくじのう)に卵を産みつけ、孵化するまでオスが世話をすることが知られています。
展示水槽には複数尾のイシヨウジがいて、そのうちの2尾がぴったりと寄り添って泳いでいることがあります。しかしそのようすを見るようになってからしばらく経っても、どうも卵を産む気配がありません。
なぜだろうと閉園後にしばらく観察していたときのことです。並んで泳いでいた2尾のイシヨウジの後ろに別のイシヨウジがスッとあらわれ、ペアの1尾と泳ぎ出してしまったのです。残された1尾はとくに追いかけるようすもなく、その場を離れてしまいました。新しいペアはというと、しばらく一緒に泳いだあとに別れてしまいました。
別の日に観察したときもペアになったり別れたりしていたので、どうやら今は決まった相手がおらず、パートナー探しの期間なのかもしれません。つい先日、新しい個体を展示水槽に追加したばかりなので、気に入る相手が見つかるのをもうしばらく待ちたいと思います。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 村松茉由子〕
(2018年11月16日)