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水槽一の自由人、オキザヨリ
 └─2018/08/31

 外洋性の魚を中心に展示している葛西臨海水族園の目玉水槽「大洋の航海者 マグロ」。この水槽は「アクアシアター」、そして「擬岩側」と呼ばれる2つの広いスペースを水路で繋ぐ変形ドーナツ型水槽です。ここには水族園の代表的な生物であるクロマグロを展示していますが、今回ご紹介するのは「擬岩側」で生活する魚です。


のんびり泳ぐオキザヨリ

 擬岩側では現在、6種の魚が生活をしています。その中でひときわ細い体をしているのが今回の主人公、世界中の熱帯から温帯に広く分布し、全長1.5メートルに達するダツ科の大型魚、オキザヨリです。

 水面近くにいることが多いのですが、中層を漂っていたり、水路付近でフワフワと過ごしたり、自由気ままに移動しています。たえず泳ぎまわっている魚が多いこの水槽で、ノンビリして見えるオキザヨリの姿は逆に目立ちます。

 アクアシアターと擬岩側と繋ぐ水路には、クロマグロとその他の大型生物をわけるための仕切りの網があるのですが、オキザヨリはたまに網の目を抜けてアクアシアター側に入り込むこともあります。ただし、入り込んだオキザヨリは、クロマグロがほとんど利用していない水槽端の水面近くにいるため、お互い干渉せずに済んでいるようです。

アクアシアターに侵入したオキザヨリ(赤丸内)
愛嬌のあるコワモテ顔?

 えさの時間はさらにマイペースぶりを発揮します。同居しているスマやハガツオたちと同様、キビナゴやアジ、切ったイカ、むきエビなどを与えますが、オキザヨリには好みがあるのか、たくさんあるえさを前にしてもなかなか狙いが定まらず、すぐには食べに行かないのです。一方、スマやハガツオは爆発的な食い気を見せ、オキザヨリの前に漂うえさを次から次へと食べてしまうのです。狙いが絞りきれないまま、どんどんえさを食べられてしまうオキザヨリ。しかもついには食べる意欲がなくなるのか、えさを口にもせず、あきらめてしまう日もあるのです。

 私たち飼育係はすべての魚たちにえさが行き渡るよう、水槽内に舞うえさの量などを確認しながら投入量を調整していますが、まれに「オキザヨリ、今日は食べられてなかったな……」ということも。そんな日は、夕方から給餌タイムを追加することもあります。この時間帯になると、オキザヨリは水路に集まっています。水路には他の魚がほとんど入ってこないので、直接給餌するにはうってつけの場所なのです。

 「手のかかる子ほど可愛い」と言いますが、コワモテの魚ながら愛着がわいてきます。なにかと手間のかかる、自由人ならぬ「自由魚」オキザヨリ。のんびりした姿を葛西臨海水族園でご覧ください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 増渕和彦〕

(2018年08月31日)


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