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クローンで増えるギンブナ
 └─ 2018/05/18

 春も深まり暖かい陽気になってきました。葛西臨海水族園「水辺の自然」エリアの「池沼」水槽もだんだんと水温が上がり、魚たちが活発に泳いでいます。タナゴやフナのなかまはちょうど繁殖のシーズンで、卵をもったお腹が大きい個体も観察できます。今回は繁殖シーズンを迎えている魚の中からギンブナをご紹介します。


ギンブナ

 ギンブナは日本各地の河川や沼などに広く生息し、田んぼ脇の用水路などにも上がってくることがあります。簡単な道具で釣ることができるので、子どものときに釣って遊んだという方もいると思います。コイと並んで身近な水辺にすむ、なじみぶかい魚ですが、じつは珍しい繁殖のしかたをする魚でもあります。

 ギンブナはほとんどの個体がメスです。そのメスの中にはオスと繁殖をするものもいますが、多くはオスを必要とせずにメスだけで繁殖します。ただ、その場合でも卵が発生を始めるためには、精子による刺激が必要で、ギンブナでは同じ場所で繁殖する、ギンブナ以外のフナのなかまの精子が利用されます。

 このとき、精子は卵と受精はしないので、生まれてくる子どもはメス親とまったく同じ遺伝情報をもったクローンということになります。このようにメスだけで繁殖することを「単為生殖」と呼びますが、他の魚ではほとんど知られていません。

 また、フナのなかまは現在、ギンブナ以外にナガブナ、オオキンブナなどの種類に分けられていますが、生態が多様で変異がたくさんあるため、分類がまだ混乱しています。今後研究が進めば、もしかすると今回ご紹介した内容は少し変わってくるかもしれません。フナは身近にくらしていますが、じつはまだよくわかっていないことが多いのです。

 私たちの身近な魚でも意外な生態をもっているものは他にもたくさんいます。暖かい季節、海や川に出かけた際に、見つけた魚のことを調べて見ると意外な発見があるかもしれません。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 遠藤周太〕

(2018年05月18日)


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