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「底魚」にえさを与えるための工夫
 └─2018/03/09

 葛西臨海水族園の「東京の海」エリア「東京湾の漁業」水槽では、東京湾で漁獲されるさまざまな魚を展示しています。ここでは水槽の中層や表層を泳ぐスズキやマアジなどの魚が目に入ります。

 また、マアナゴやシロギス、マコガレイなどは「底魚」(そこうお)とよばれ、海底付近にすみ、砂の中や物陰に隠れたりする習性があります。水槽内の底魚にしっかり給餌するためには工夫が必要です。


底にいる魚にパイプを使って給餌する

 どの水槽でも基本的にえさは水槽の上から与えます。その日の魚の動きや魚種ごとの習性を考え、一度に与える量や間隔などを調節し、えさが全体に行き渡るようにします。しかし、上から与えるだけでは底魚に十分えさが行き渡らないことがあるため、専用の給餌器を使用します。それは、水道配管などで用いられる直径3センチの塩化ビニール製パイプを底に届く長さ(約2.5メートル)に加工したものです。上の入口部分から海水とともにえさを流し込むと、底魚に届く仕組みです。

 このパイプを使えば底魚に給餌することができますが、思い通りにいかないこともあります。この方法を水槽内の多くの魚が学習してしまい、底の方にやってきて、底魚のえさを食べてしまうのです。

 そこで、他の魚に食べられても大丈夫なように、底魚用に与える一度のえさの量を増やすこともあります。また、マアナゴは底から上がってくることもあるため、隠れ家にしている竹筒近くにえさを流し込む工夫もしています。

 このように、器具を使ったとしても、えさをただ流し込むだけではなく、水槽の上から与えるときと同様、工夫が大切です。飼育係は何気なくえさを与えているように見えますが、じつは魚の動きをよく観察しながら、どの個体にも十分にえさが行き渡るよう気を配っているのです。東京の海エリアでは午後にえさを与えています。飼育係を見かけたら、えさの与え方にも注目してください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 佐藤真心〕

(2018年03月09日)


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