世界の海エリアの「バハ・カリフォルニア沿岸」の水槽では、4匹のファインスポッテッドジョーフィッシュを展示しています。現在、展示しているファインスポッテッドジョーフィッシュは、すべて水族園で生まれたものです。
4匹それぞれが砂に穴を掘り、サンゴ礫や貝殻などを積み重ねて穴を補強し、巣穴にしています。この4匹のうち1匹がオスで、その他の3匹がメスです。
じょうずに作られたファインスポッテッドジョーフィッシュの巣穴
実は今、このオスとペアになってくれるメスを探すため、1対3の集団お見合いをしています。
ファインスポッテッドジョーフィッシュは、オスがその大きな口でメスから卵を受け取り、口の中でくわえたまま孵化するまで保護するという生態を持っています。しかし、相性が合わないオスとメスでは、オスが卵をくわえずに放置したり、互いに大きく口を広げ合ってケンカしたりしてしまうため、繁殖につながりません。そのため、効率よくペアの相手を探すために、1対多数のハーレム体制でペアづくりを試しています。
しかしこのオス、巣穴づくりが下手で、他のメスたちが作るようなきれいな巣穴を作ることができません。そのため、きれいな巣穴がほしいときにはメスの巣穴を奪ってしまうのです。せっかくメスがきれいな巣穴を作っても、このオスが何食わぬ顔でそこに入り込み、大きな口を広げてメスを追い出してしまいます。しかも巣穴のメンテナンスも下手なため、すぐに崩してしまいます。
追い出されたメスはショックなのか、オスが崩した巣穴の残骸の中でしばらくぼんやりしています。数日後にはやる気を取り戻すらしく、新たな巣穴を作り始めるため、そんなときには周りにそっと、材料となる貝殻などを撒いてあげます。早いときには一晩でまた立派な巣穴を作りあげますが、そのときには既にオスが他のメスから奪った巣穴を崩してしまっており、再びこのきれいな巣穴を狙っています。
きれいな巣穴を狙うオスと警戒するメス
以前は、このオスにも巣穴を何度も作ってくれる甲斐甲斐しいメスがいましたが、残念ながら先日、死んでしまいました。こんなオスと仲良くペアになってくれる天使のようなメスが再び現れるのか、天に祈るばかりです。
どのメスがこのオスとペアになってくれそうか、水槽の前でぜひ予想してみてください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 小味亮介〕
(2017年11月17日)