下の写真をごらんください。2尾はまるで別種のように見えますが、同じ種類の幼魚と成魚です。名前はサザナミヤッコ。おもにインド洋や西部太平洋海域、日本では千葉県以南のサンゴ礁や岩礁域にすむキンチャクダイ科の魚です。
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サザナミヤッコ幼魚 | サザナミヤッコ成魚 |
葛西臨海水族園の「東京の海」エリア「伊豆七島の海3」水槽では左の写真の個体を展示しています。この個体は全長3センチほどの幼魚で、写真のような青色と白色の波模様が水槽の中でよく目立ちます。一方、右の写真が「伊豆七島の海2」で展示している全長30センチほどの成魚で、体全体に白色や黄色、青色の斑点があります。
なぜ幼魚から成魚になる過程でこのように色と模様が変わるのでしょうか。諸説ありますが、幼魚自身の身を守ることに役立つからとも言われています。サザナミヤッコは成魚になると、えさとなるカイメンやホヤなどが豊富なところに縄張りを作り、侵入してくる同種を追い払おうとします。そこで幼魚は別種のフリをすることで、追い払われずにえさを食べられるようです。
水族園でも成魚で体の大きな個体が、自分よりも一回り小さな個体を追い払うことがあります。約1m以内の距離に近づいてきた個体を気にするようで、小さな個体だと追い払われ、岩陰に隠れてしまうこともあります。ところが、近づいてきたのが別種の魚だと気にすることなく、ときにはいっしょに泳いでいることさえあります。
葛西臨海水族園では幼魚と成魚を隣あった水槽で展示しているので、模様の違いを見くらべてください。また「伊豆七島の海2」水槽には成魚以外に、波模様の名残がある幼魚と成魚の中間の個体も複数展示しています。それぞれの模様の違いを観察してみてください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 佐藤真心〕
(2017年11月10日)