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南極の貝類、アンタークティックウェルクの展示
 └─2017/11/03

 2017年10月4日、葛西臨海水族園「北極・南極の海」水槽でアンタークティックウェルクの展示を始めました。アンタークティックウェルクは、南極海の浅海から水深約1,000メートルの深海まで分布するエゾバイ(巻貝)のなかまで、成長すると殻の高さが7センチメートルほどになります。殻の色は個体によって差がありますが、乳白色に近いベージュが多く見られます。

 水槽を覗きこむと何もいないように思われるかもしれません。じつはこの貝類は、ふだん砂に潜っているのです。よく見ると、白い筒状のものが砂の中からたくさん出ているのがわかります。これはアンタークティックウェルクの体の前方にある「水管」です。この水管で呼吸をしたり、匂いを感じたりすることができます。死んだ生き物などの匂いを感じると、アンタークティックウェルクはいっせいに砂から出てきて、えさに群がって食べ始めます。南極海では海底のゴミを食べてくれる掃除屋さんとして活躍しているのです。

えさに集まるアンタークティックウェルク。
砂から出ている白い筒状のものは水管
食べ終わった後のエビの殻

 巻貝のなかまには口の中に「歯舌」(しぜつ)と呼ばれる細かい歯がたくさん並んだ器官があり、この歯舌でエサを削るようにして食べます。水族園ではサクラエビやアジの切り身などを与えていますが、食べ終わった後にはサクラエビの殻やアジの骨だけがきれいに残されており、その器用さに驚きます。


小さな粒が卵。1つ殻の中で1個体の稚貝が育つ

 繁殖の時期になると、アンタークティックウェルクのメスは岩の上などに直径約8ミリメートルの殻につつまれた卵をいくつも産みます。1年ほどたって殻から出てきた稚貝は、すでに親と同じ姿をしています。今後、展示水槽でも卵を産むかもしれません。その際は、またお知らせしたいと思います。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 高濱由美子〕

(2017年11月03日)


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