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ベニテグリの展示、繁殖への期待
 └─2017/09/22

 葛西臨海水族園では、「世界の海」エリア「深海の生物1」水槽でベニテグリを展示しています。ベニテグリは日本では南日本に分布し、水深200メートルほどの砂泥底に生息しているネズッポ科の魚です。深海の底引き網漁などで漁獲され、食用としても利用されています。

 浅い海に生息しているネズッポのなかまの多くは、砂地にまぎれてしまうような地味な体色をしており、いつも底にはりついて生活をしています。ベニテグリもそれらと同じような生活をしているのですが、体色はその名のとおり鮮やかな赤い色をしています。深海は赤い光が届きにくいため、赤色は目立たないと考えられています。ベニテグリの体色は、ほかの生き物から身を守るのに役立っているのかもしれません。


 ベニテグリはふだんあまり泳ぎまわらず、底でじっとしています。動きをじっくりと観察してみると、底を少し進んでは止まり、また進むという行動を繰り返しています。ときおり大きな背びれを広げ、その美しい姿を見せてくれます。

 3か月ほど1尾だけで展示をしていましたが、2017年8月10日にもう1尾を追加しました。追加してすぐ、2尾はひれを大きく広げて寄り添うように体をすり合わせ、何かを確認しあっているようすでした。その行動はすぐおさまりましたが、とても興味深いものでした。

 背びれの模様が違うこと、そして1尾は腹部がふくらんでいることから、2尾はオスとメスではないかと考えられます。寄り添うような行動は、もしかしたら繁殖に関係する動きだったのではないかと期待しています。2尾の関係がどうなっていくのか、観察を続けていきます。


寄り添う2尾

 「深海の生物1」は薄暗くて一見すると動きの少ない静かな水槽ですが、ベニテグリをはじめ、見れば見るほど発見のある生き物ばかりです。じっくり観察をしてみてはいかがでしょうか。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 市川啓介〕

(2017年09月22日)


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