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カニだけどカニではない「エゾイバラガニ」
 └─2017/09/08

 葛西臨海水族園ではたくさんの魅力的な甲殻類を展示していますが、今回は「世界の海」エリアの「深海の生物2」水槽で新しく展示を始めたエゾイバラガニをご紹介します。

 エゾイバラガニは十脚目異尾類タラバガニ科に属し、駿河湾以北、北海道沿岸、オホーツク海、ベーリング海などの水深600メートルから1600メートルの深海に生息しており、食べるとミルクのような甘い香りと味わいがするため、「ミルクガニ」とも呼ばれます。


「深海の生物2」水槽のエゾイバラガニ

 展示しているエゾイバラガニは水族園の職員が漁船に乗り込んで採集したものです。甲羅の幅は成体で約12cmと近縁のタラバガニの半分ほどの大きさで、全身は名前の通り「イバラ」のような鋭い棘で覆われています。

 エゾイバラガニの体をさらに観察すると、小さい体から細長い脚が伸びるその姿はまさにカニそのもの。その姿形と名前から、カニだと思っている方も多いようですが、じつは「カニ」ではなく、「ヤドカリ」のなかまです。

エゾイバラガニの歩脚は3対
イバラガニのなかまの標本。
甲羅の中に4対目の歩脚が見られる

 カニとの大きな違いは歩脚の数です。カニやエビのなかまははさみ脚を除いて4対の歩脚があり、ヤドカリのなかまは3対や2対の歩脚があります。エゾイバラガニの歩脚は3対です。貝の殻を「宿」(やど)として持ち歩いたりはしていませんが、脚の数からもヤドカリのなかまであることがわかります。ちなみに、4対目の歩脚は退化して小さくなったものが甲羅の中にあります。

 カニそっくりのヤドカリのなかま、エゾイバラガニ。水族園ではタカノケフサイソガニやツノハリセンボンなどのカニの展示もしていますので、本物の「カニ」との違いをしっかりチェックしながら観察をしてみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 柳下悠〕

(2017年09月08日)


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