6月中旬──毎年この時期になると、「あの季節」がやってきたなと感じます。それは葛西臨海水族園で年に一度の新しいクロマグロが搬入される時期なのです。
今回水族園に搬入されたクロマグロ(以下マグロ)は、高知県の養殖場で大きく育てたものです。まず、高知県から神奈川県の三崎港まで活魚船で運び、その後大型トラックに積み替えて水族園に運びます。トラックに積み込むときは専用担架でマグロを海水ごとすくいます。海水ごとすくうのは、皮膚の弱いマグロが担架にすれてケガをしないようにするためです。
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活魚船からトラックの水槽にクロマグロを運ぶ | 悪天候の中、すべての作業が手作業でおこなわれました |
体重約10キロのマグロと海水が入った担架はとても重くなるので、落とさないよう慎重にリレー形式で運びます。すべてのマグロをトラックへ積み込んだら、休む間もなく水族園に向かいます。
水族園に到着したらトラックからマグロをすくい取り、マグロ水槽へ運びます。輸送中のケガなどがないか最終チェックをしてから、1尾1尾を識別するためのICチップを埋め込み、水槽に放します。ICチップを読み込めば、このマグロがいつ、どこから水族園にやってきたのかがわかります。
こうして長い道のりをていねいに運んできた56尾のマグロが水槽に加わりました。元気に泳ぐマグロたちを見て、スタッフもようやくほっと一息つきました。
先輩クロマグロに混じって泳ぐ、新入りのクロマグロたち
しかし、まだまだ安心はできません。新入りのマグロたちは、70尾を超える食欲旺盛な先輩マグロたちの中に混じって、えさをうまく食べなければなりません。ここからが飼育係の腕の見せどころです。搬入後数日間、新入りマグロはえさに反応するのですが、先輩マグロたちの勢いに負け、水槽上部までえさを食べに上がることができませんでした。
そこで、一度に水槽に入れるえさの量を増やしたりして、新入りマグロのいる水槽の下の方までえさが届くよう工夫しました。えさを目の前まで落としてやることで、新入りマグロたちも徐々にえさを口にすることができるようになりました。
新入りマグロたちも水族園に来て約4週間。環境に慣れてきて今では先輩マグロの群れに混じりながら積極的にえさを食べています。この「クロマグロの給餌」は毎日14時30分からおこなっています。約120尾のクロマグロたちの群れによる迫力満点の泳ぎをぜひ見に来てください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 石神まゆか〕
(2017年07月14日)