2016年3月から、葛西臨海水族園の「東京の海」エリア「小笠原の海4」水槽の上部に設置した小水槽でアカハタを展示しています。アカハタは、全長35センチほどになるハタ科の魚です。日本では、相模湾から屋久島の太平洋沿岸や伊豆諸島、小笠原諸島などに分布し、沿岸の岩礁やサンゴ礁域に生息しています。
“歯みがき”中のアカハタ
展示したアカハタは、2011年9月に小笠原諸島父島の小笠原水産センターで生まれ、大切に育てられた個体です。このアカハタは歯ブラシを近づけると、こちらを向いて大きく口を開けることがあります。口の中を歯ブラシでこすると、口を開けたままじっとしています。体を歯ブラシでこすってみても、いやがるようすはほとんど見られません。
海の中では、掃除魚として知られるホンソメワケベラなどが、アカハタの体や口の中をつついていることがあります。もしかしたら、歯ブラシのことを掃除してくれる生き物と思っているのかもしれません。
小笠原水産センター。小笠原の海の資源調査や種苗生産技術の開発など、
漁業活動の支援や産業の活性化に向けた取組みを進めています
この歯みがきのようすは小笠原水産センターではおなじみの行動です。遊びに来た子どもがなにげなく入れた木の枝にアカハタが集まってきて、口の中に入れたのがきっかけと聞きました。以来、歯ブラシを近づけていくうちに、慣れて近寄ってくるようになったそうです。
現在、アカハタの歯みがきは、わたしたち飼育係の日課になっています。まだ完全には慣れていないため、歯ブラシから逃げてしまうこともありますが、根気よく続け、毎回口を開けるようにしたいと思います。そうすることで、今後この歯みがきがアカハタの健康状態を知る手段の一つになるのではと期待しています。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 戸村奈実子〕
(2016年05月06日)