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続・新たな視点で見てみると(55)砂に立つコイン──エキセントリックサンドダラー
 └─2016/03/11

 葛西臨海水族園「世界の海」エリアの最初の水槽「カナダ沿岸」の底面には、細かい砂がいっぱい敷いてあります。底砂の上を観察すると、丸くて薄い円盤状の生物、エキセントリックサンドダラーが見つかるはずです(砂に潜っていることもあるので、見つからないときは時間をおいてまた探してみてください)。

 サンドダラーとは「砂の1ドルコイン」という意味ですが、丸く平たいコインのようなものが砂の上にいくつも落ちているようすから、この奇妙な名前がつけられたのかと思います。このなかまは日本での呼び方も変わっていて、「カシパン」や「タコノマクラ」といった名前がつけられています。平べったい体をしていますがウニのなかまで、体の表面には細かなトゲがびっしり生えています。

 水槽のサンドダラーはじっとして動かないように見えますが、じつは、体表のとげを使ってゆっくりと移動します。その特徴的な行動として、水流に乗って流れてくる細かなえさを捕らえるために、砂の上に斜めに立ち上がることがあるのです。


 今回の動画では、このサンドダラーの動きをご紹介します。しかし、とてもゆっくり動くので、撮影には時間がかかります。展示水槽の前に何時間もカメラをセットしておくわけにもいかないので、裏の水槽で飼育している個体を撮影しました。

【動画:動くエクセントリックサンドダラー】
サンドダラーの動きを一定間隔で連続撮影しました(タイムラプス)。
早送りに見えるシーンの撮影時間は約4時間40分です。

 サンドダラーが移動することはわかっていましたが、撮影した映像をあらためて見ると、いっせいに砂から立ち上がったり、長い距離を移動したり、(ゆっくりだけど)意外にダイナミックな動きをしていたのだなと感心しました。動画の最後は通常スピードで撮影した体表のトゲの動きです。これを見ればウニのなかまだと納得していただけると思います。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕

(2016年03月11日)


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