魚の中には、他の魚の体表についている寄生虫を食べる種類があり、「クリーナーフィッシュ」とまとめて呼ばれています。ホンソメワケベラはインド洋、太平洋のサンゴ礁、温暖な岩礁域に生息するベラのなかまで、よく知られるクリーナーフィッシュです。
ホンソメワケベラ
葛西臨海水族園「世界の海」エリアの「南シナ海」の水槽では、タマカイやメガネモチノウオ(ナポレオンフィッシュ)といった大型の魚といっしょにホンソメワケベラを展示しています。この水槽の魚たちの多くはホンソメワケベラよりも何倍、何十倍も体が大きいのでホンソメワケベラが食べられてしまうのではと心配されるかもしれませんが、そうした事態はめったに起こりません。
ホンソメワケベラは尾びれをピョコッピョコッと動かして飛び跳ねるように泳ぐことがあります。じつはこの泳ぎは「私は体についた寄生虫を食べる(クリーニングをする)魚ですよ」という意味があるのです。この泳ぎを見た魚たちは、クリーニングを受けようと集まってきます。もっとも、この水槽の魚たちはホンソメワケベラがクリーニングをしてくれるとわかっているらしく、特徴的な泳ぎを目にしなくても集まってきます。
クリーニングを受けるクロハギ
「南シナ海」の水槽では朝の8時少し前にホンソメワケベラがクリーニングをしている行動が良く観察できます。同じ水槽に入っているクロハギやアヤコショウダイの体やえらをツンツンとつついてクリーニングしています。とくに大型のタマカイは、えらの掃除を受けているときに大きな口をグアッと開け、とても気持ちよさそうです。
えらの中をクリーニングされているタマカイ
朝のクリーニングの時間には、魚たちが次々と入れ替わり立ち替わりやってきます。ホンソメワケベラは水槽内のとても人気な掃除屋です。運がよければ開園中でもクリーニングのようすを観察することができます。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 遠藤周太〕
(2016年02月26日)