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ペインテッドグリーンリングの繁殖に挑戦中
 └─2016/02/05

 葛西臨海水族園の「東京の海」エリアにある「海藻の林」水槽では、毎週休園日に水槽に潜り、海藻の手入れや掃除、給餌などをおこなっています。

 2016年1月6日、本年最初の休園日のこと、いつものように掃除しようと岩の上の石をどけたところ、きれいなオレンジ色をした卵の塊を見つけました。何の卵だろうと思いましたが、すぐにペインテッドグリーンリングのものとわかりました。なぜなら、すぐそばに卵を守っているオスがいたからです。その日は石を元の場所にもどし、しばらく観察を続けることにしました。

卵塊
ペインテッドグリーンリング

 オスはほとんどの時間を卵のそばで過ごし、他のオスや他の魚が近付くと、追い払う行動を見せました。また、メスに対しては、しきりに体をふるわせながらメスの周囲をまわり、アピールしているかのようなようすも観察することができました。

 ペインテッドグリーンリングは成長すると全長25センチほどになるアイナメ科の魚です。東部太平洋のアラスカ中部からメキシコ南部に分布し、水深50メートルまでの岩礁域に生息しています。冬の繁殖期にはオスは体色が黒っぽくなり、卵を守ることが知られています。

 過去の資料を調べたところ、産卵と孵化の記録がありましたが、その後の記録はありません。そこで、ぜひ繁殖に挑戦したいと考え、卵を回収することにしました。生まれたばかりの仔魚はとても小さく、水槽内では、他の魚に食べられたり、濾過装置に吸い込まれるなどして生き残れないためです。


卵はこのあたりにあります

 翌週、再確認したところ、発生の進んだ卵と新たに産みつけた卵を見つけたので、発生の進んだ卵を慎重に回収しました。取り出した影響だったのでしょう、その日のうちに卵から仔魚が孵化し始めました。現在、仔魚の大きさは7ミリ程度。バックヤードの専用水槽で育成し、えさの動物プランクトンを食べ始めています。成長するまでしばらくかかりそうですが、じっくり、ていねいに育てていきたいと思います。

 なお、2016年2月3日の時点で、卵は同じ場所で3卵塊確認しています。タイミングがよければ、オスが他の魚を追い払う行動などが見られるかもしれません。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 戸村奈実子〕

(2016年02月05日)


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