葛西臨海水族園の「ハワイ沿岸」水槽と「小笠原・礁」水槽でシラヒゲウニを展示しています。シラヒゲウニは、直径10センチほどになるラッパウニ科のウニで、インド洋から西太平洋にかけての暖かい海に生息しています。日本では房総半島以南で見られ、沖縄県などでは食用にもなっています。

水槽のシラヒゲウニ
シラヒゲウニは、白やオレンジ色をした長さ1センチほどの短いトゲでおおわれています。体の表面に小石をつけていることも多いのですが、これは自分でつけたものです。ウニのなかまには、先が吸盤になったチューブのような足(管足[かんそく])がたくさんついていて、その足で小石や貝殻などを拾い、好みの場所にくっつけます。このオシャレな行動は他の種類のウニでも見られるもので、身を守るためのカムフラージュと考えられています。
水槽のシラヒゲニが近くにいたら、トゲの根元に注目してみてください。トゲのあいだから、何か茶色いものがゆらゆらと動いているのがわかります。よく見るとトゲより短く、細い糸のようなものが出ていて、それが左右に揺れているのです。細い糸の先端は三つに分かれていますが、とても小さいので、肉眼では二又に見えるときもあります。まるで小さな花が風に揺れているようです。先端を閉じてつぼみのように見えるものもあります。

トゲの根元で揺れるたくさんの叉棘。右は拡大写真
このゆらゆら動いているものは、「叉棘」(さきょく)というトゲです。ウニのなかまは、ふつうのトゲの他に特殊な役割をする変形したトゲ、つまり叉棘をもっています。1匹のウニがいくつかの種類の叉棘をもつことが知られていますが、そのうちもっとも大きくて目立つのは、先端が三つに分かれている「爪状叉棘」(そうじょうさきょく)と呼ばれるものです。
三つに分かれている部分は「顎」の役割を果たす部分です。この部分を開閉して体のゴミをつかまえて取り除いたり、敵を攻撃したりします。この顎と、トゲの根元には骨がありますが、途中にある細い柄の部分はやわらかく、柔軟に動きます。

ナガウニのなかまの爪状叉棘
シラヒゲウニの叉棘の動きに感動し、展示している他の種類のウニも観察してみましたが、残念なことに肉眼ではあまりよく見えません(よく見ると確認できますが、とても小さい……)。叉棘の“ゆらゆら”を見るには、シラヒゲウニがおすすめです。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 高濱由美子〕
(2015年10月02日)