葛西臨海水族園では、2015年3月12日からウチワエビのフィロゾーマ(幼生)を展示しています。フィロゾーマは、クラゲに乗り、そのクラゲを食べながら生活することから、ジェリーフィッシュライダー(クラゲに乗る者)と呼ばれています。
・記事「
今年も登場!ジェリーフィッシュライダー」(2015年3月13日)
水族園では、餌として形が崩れてしまったクラゲを与えていますが、フィロゾマが順調に成長し、クラゲの消耗が早くなりました。そこで、クラゲの代わりになる他の餌をバックヤードで試してみることにしました。
文献や過去の飼育事例を調べたところ、過去の研究では、アサリで飼育に成功していました。そこで、アサリを与えてみましたが、近づけると勢いよくつかむものの、しばらくすると離して落としてしまいました。クラゲだけを食べて育ったせいか、何か違うと気づいたのかもしれません。よく観察すると、弾力があって少し硬い部分は食べにくいようだったので、柔らかい部分をちぎって少しずつ与えました。すると、アサリが口から消化管に入っていくところも確認でき、数日後にはよく食べるようになって一安心しました。
左:アサリを食べるフィロゾーマ 右:変態直後のニスト
「フィロゾーマはクラゲしか食べないのですか?」と来園者の方から聞かれることがありますが、飼育下ではアサリなどの二枚貝のほか、魚類の仔魚を食べることもあるようです。野生ではサルパのなかま(クラゲに似た浮遊生物)も食べるようですが、野生個体の採集数や観察事例が極めて少ないため、何をどれだけ食べているのかはまだ謎に包まれています。今後、他に何を食べるのか試してみたいと思います。
成体となったウチワエビ(展示しているフィロゾーマとニストの親)
アサリを餌として与えたフィロゾーマは成長を続け、ついに次の形態である透明なエビの姿をした「ニスト」に変態しました(ニストについては下記リンク記事をごらんください)。
・記事「
ジェリーフィッシュライダー大変身!」(2014年4月4日)
現在、フィロゾーマ、ニスト、親(成体)を展示中です。ウチワエビの生活史展示はまもなく終了しますので、お早めにごらんください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 村松茉由子〕
(2015年05月30日)
(2015年06月02日更新)
(2015年06月12日更新)