葛西臨海水族園「世界の海」エリアの「チリ沿岸」水槽では、お菓子みたいな名前のサラサエビのなかま、カマロンデロカを展示しています。このエビ、面白いのは名前だけではなく、その行動も興味深いのです。
先日、バックヤードの水槽で飼育しているカマロンデロカたちが、ふだんより活発に動いている気がして、よく観察してみました。すると、ひときわ大きなオスが小型の個体を脚の下に抱えて、周りから近づいてくる個体を追い払っているではありませんか。「おおっ!交尾前ガード」と思い、すかさず撮影してしまいました。
裏の水槽で飼育している個体。大きなオスの下に小型のメスが見える
交尾前ガードは、エビやカニなどの固い殻を持つ甲殻類によく見られる行動です。メスが交尾可能なのは脱皮した直後の殻がまだ柔らかいときに限られるため、オスが確実に交尾を成功させるために、脱皮前のメスをガードして確保するよう発達したと考えられます。
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以前水槽で観察されたタカアシガニの交尾前ガード。オスは長い脚でメスを囲う檻を作っているかのように見える | ユビナガホンヤドカリの交尾前ガード。白っぽい貝殻のオスが茶色い貝殻のメスをハサミでつかんでいる |
当然動画も撮りました。コンパクトカメラでの撮影な上、水槽が傷だらけなので多少見にくいですが、興味深い行動が記録できました。
【動画:カマロンデロカの交尾前ガード(42秒)】
まわりの個体を追い払おうとするオスの脚の動きは、どことなくユーモラスに見えるのですが、抱え込んでいるメスがあまりに小さいため、源氏物語の「若紫」を思い起こさせました……。このサイズでもう産卵するのでしょうか?
〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕
(2015年05月15日)