葛西臨海水族園の「東京の海」エリアにある「海藻の林」水槽では、2015年2月からカリフォルニアシープヘッドを展示しています。カリフォルニアシープヘッドは、成長すると全長1メートル近い大きさになるベラ科の魚です。アメリカのモントレー湾からメキシコのカリフォルニア湾にかけて分布し、海藻が生い茂る場所などに生息しています。

今回展示したのは、東海大学海洋科学博物館で12年間飼育されていた全長70センチメートルほどの個体です。成長するにつれ前へ張りだしてくるひたい、発達した厚い下顎に強靭な鋭い犬歯をもち、なかなかのいかつい顔をしています。大きな体にゆったりとした泳ぎは貫禄を感じるほどで、とても新入りには見えません。

しかし、やはり環境が変わり慣れないためか、水槽に入れてしばらくの間はえさをほとんど食べず、見ていてやきもきさせられました。岩陰に身を潜めていることも多く、そのゆっくりした動きのために、水槽上からえさを与えても他の魚に食べられてしまうのです。
しばらくそのような状態が続いたので、休園日に水槽に潜り、直接給餌を試みましたアマエビなどのえさを大きなピンセットで目の前に差し出すと、最初の1〜2回だけは後ろに下がってしまいましたが、その後はすぐに食べるようになりました。ここ数日は、上からまいたえさにも早く気づくようになり、他の魚にまざって食べるようになってきています。
古巣の博物館では気の強い個体だったと聞いています。おそらく水族園の水槽でも、徐々に頭角を現してくるのではないでしょうか。12年という長い間、大切に飼育されてきたシープヘッド。これからは葛西臨海水族園で大事に長く飼育していきたいと思います。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 戸村奈実子〕
(2015年04月17日)