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すぐそこにいる貴重なハゼ
 └─2015/02/28

 葛西臨海水族園の目の前にある人工干潟「西なぎさ」では、職員が2か月に1回、地曳網を曳いて生物調査をおこなっています。採集された生物の一部は、東京の海エリア「葛西の海2」水槽で展示しています。調査のたびに展示生物の種類が変わるため、水族園の目の前に広がる干潟の“今の姿”がよくわかります。

 2015年2月2日の調査ではハゼのなかまの幼魚が多く、そのほかにシラタエビやアミのなかまが確認できました。今回はその中からエドハゼを紹介しましょう。



 エドハゼは全長5センチほどの小型のハゼです。名前の「エド」は「江戸」のこと。東京湾で得られた個体から新種記載されたため、この名がつけられました。体色は全体的に白っぽく、細くて黒い縦線が並んでおり、とても地味です。また、体型は細長く、口が目の位置よりも後まで開くため、口が大きく見えます。



 ハゼのなかまは似たような種類が多いため、識別が困難な場合が多いのですが、他のハゼと比べる機会があったら、口や体の模様に注目してください。今回の調査で採集されたエドハゼは幼魚で、やや小型です。ふだんは砂の上にいますが、給餌の際、ゴカイやアサリをかなり細かくして水の流れに乗せて撒くと、他の生物に物怖じせず、水槽の中層まで上がって来てついばむ姿が観察できます。



 じつはこのエドハゼ、環境省のレッドリストに記載されている種で、絶滅の危険があるとされています。減少のおもな原因は、埋め立てや護岸工事などがによって、生息地である河口域の干潟が消失してしまったためと考えられています。

 東京湾では50種以上のハゼのなかまが記録されています。その中には、エドハゼやトビハゼなど数を減らしている種もいます。東京湾にも貴重な生き物がいるということは一般的にはあまり知られていません。そんな生き物が水族園のすぐ目の前の干潟で観察することができるのです!

 これから暖かくなるにつれて、生き物の数も増えていきます。水族園で予習してから「西なぎさ」に行ってもよし、「西なぎさ」で遊んだ後に水族園で復習してもよし。暖かくなったらぜひ、西なぎさにも足を伸ばしてみてください。干潟の水溜りを覗くと足元に身近で貴重なハゼが見られるかもしれませんよ。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 齋藤祐輔〕

(2015年02月28日)


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