ユカタハタは駿河湾より南の暖かなサンゴ礁の浅場に生息するハタ科の魚です。
ハタ科のなかまは、多様な種が伊豆諸島や小笠原諸島にも分布しており、「東京の海」エリアでも展示をしたいと考えてきました。しかしハタ科の魚は肉食性が強く、他の魚との同居が難しい種類でもあります。そこで、ハタ科の中でも大型にはならないユカタハタを「伊豆七島2」水槽に展示しました。
展示したユカタハタは全長30センチほどで、体の前半分が赤橙色、後半分が暗青色をしており、青色の水玉が散ったきれいな姿をしています。
ユカタハタは大きな頭と下あごが突き出した大きな口が特徴的です。さらに体中のひれが大きく発達しています。背びれと尻びれが後方に大きく伸び、うちわ型をした尾びれの付け根にまで伸びているのも大きな特徴です。この3つのひれでうまく水を捉えて急な加速をおこない、大きな口を使って一瞬で獲物を捕らえる海のハンターです。
ユカタハタを展示して1か月。展示後しばらくは岩に隠れてあまり姿が見えない状況が続きましたが、徐々に水槽にも慣れてきたのか、今では岩の周囲をゆっくり泳ぐ姿が見られるようになりました。
「伊豆七島2」水槽には、タカベやアハカラヤッコなど小型の魚が多いのですが、今のところユカタハタが他の魚を襲うようなようすは見られません。この水槽では、えさはすべての魚に一度に与えています。動きのゆっくりした魚には狙って与えますが、ユカタハタも最初は他の魚に押され気味でなかなか食べてくれませんでした。しかし展示して2週間ほどすると積極的に近寄ってきて、よく食べるようになりました。われわれ飼育係も、ユカタハタにしっかり餌を食べさせて、他の魚と無事に同居できるように奮闘中です。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 木船崇司〕
(2015年02月13日)