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サケビクニンの意外な一面──ふだんはゆったり、ときには俊敏に
 └─2015/01/09

 葛西臨海水族園の「世界の海」エリアの「深海の生物2」水槽に、約1年ぶりにサケビクニンを展示しました。この個体は2011年春頃、水族園で繁殖した個体です。飼育水温が低いため成長が遅く、展示できるまでに約3年かかりました。

 サケビクニンは茨城県や島根県よりも北の日本沿岸や日本海、オホーツク海などの水深100メートルから600メートルほどに生息します。体は半透明で、うっすらとピンクに色づき、触ると寒天のようにプヨプヨとしています。


サケビクニン

 また、変わった特徴として、顔の下にヒゲのようなものが見られます。じつはこれはヒゲではなく、ひれを支える線状の組織「鰭条」(きじょう)が伸びたもので、胸びれの一部なのです。よく観察すると、ちゃんと胸びれとつながっているのがわかります。



胸びれの一部である「鰭条」が伸びて「ヒゲ」のように見える

 さらに、このヒゲのような鰭条と口の下側には、人間の舌と同じような働きをする味蕾があるため、口の下側でそれで水槽の底や壁をなでるようにして餌を探します。

 ほの暗い水槽内をゆったりと泳ぎまわるサケビクニンの姿から、深海の幻想的なイメージを受けるかもしれませんが、ときにかけ離れた俊敏な動きをする瞬間があります。それは餌を食べるときです。ゆっくり泳いでいるところに餌をまくと、しばらくは反応せず、いつも通り水槽内を泳ぎ回っています。しかし、胸びれの鰭条で餌を感知した瞬間、今までの動きが嘘だったかのように大きな口を開け、素早くパクッと食いつきます。連続してどんどん食いついていくこともあり、ふだんのゆったりとした姿からの変わりようには驚かされます。

 幻想的な雰囲気でゆらゆら泳ぎ、しかしときには俊敏な動きをするサケビクニン、ご来園の際はぜひじっくりと観察してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 加茂耕太朗〕

(2015年01月09日)


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