葛西臨海水族園の「しおだまり」水槽では、現在カメノテを展示しています。大きさは3〜4センチで、名前のとおり「カメの手」に似た形をしています。岩に固着して移動できないので、動物なの?と思われるかもしれませんが、フジツボに近いなかまでエビやカニと同じ甲殻類です。
カメノテの成体は固着した岩から移動できませんが、一生のうち、海中を漂う期間があります。産卵後受精し生まれた幼生は、とても小さなプランクトンとして海中を漂って生活します。幼生は同じカメノテが放つ化学物質に誘われ、仲間のすぐそばに固着するのでその結果群生します。ほかのカメノテが生きていける環境なら安心だということなのでしょう。
岩に固着した後、成長して体が殻におおわれます。とがった先端部分は、三角形の大きな殻が8枚合わさっています。その8枚の殻の根元を小さな殻がぐるりと1周取り囲んでいるため、ギザギザした複雑な形状に見えます。さらにつけ根は短くて小さなウロコ状の殻でおおわれています。これらの殻は石灰質で非常に硬く、移動できない体をしっかり保護してくれます。
カメノテは磯の波打ち際に群生しギザギザした硬い体のため、しばしば人が磯で怪我をする原因になってしまうので邪魔者扱いされることもあるようです。
餌を与えると、カメノテの先端部分の殻から熊手のようなものが出てくるのが見られます。これは蔓脚というエビやカニの脚にあたる器官で、フジツボのなかまにみられるものです。移動はできませんが、蔓脚を出し入れして流れてきた水中の細かな餌を捕まえて食べるのです。
フジツボのなかまは、潮の満ち引きや潮の流れなどに刺激されて蔓脚を出し入れします。水槽ではカメノテが蔓脚をしっかり動かして餌を食べられるように、水流を工夫しながら細かい餌を与えて飼育しています。
なかなか面白い形と生活をしている生き物なので、「しおだまり」水槽で近くからよく観察していただければと思います。
写真上:岩の上に群生するカメノテ
写真下:「カメの手」のような形をしている
〔葛西臨海水族園飼育展示係 木船崇司〕
(2014年10月03日)
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