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優れモノの餌やり器、通称「くす玉」
 └─葛西  2013/09/13

 魚への餌やりは、たいてい水面目がけて手で餌をまきます。すると、表層から中層にかけて遊泳している魚の多くは、水面付近まで上がってきて餌を食べます。慣れてくると、「日本庭園の池のコイ」のごとく、飼育係の姿が見えただけで水面に上がってくる魚も少なくありません。

 一方、ふだん底層でくらす魚の中には、展示開始からいつまでたっても上がってこない魚もいます。餌が食べられない状態が続くと、次第にやせていき、健康的な姿では展示できなくなります。

 このような魚への餌の与え方として、たとえば長い棒の先に餌をつけて底まで沈める方法や水槽に潜って直接餌を与える方法などがあります。しかし、前者は餌を沈める途中でほかの魚が寄ってきて横取りされてしまったり、後者では人が潜ることで魚が落ち着かず逃げてしまい、確実に毎回餌を与えることができません。

 そこで今回紹介するのが、通称「くす玉」という餌やり器を用いた方法です。これは、長さ30センチほどの円筒形の透明なプラスチック製容器で、真ん中にちょうつがいがあってパカッと左右に開きます。このため我々は「くす玉」と呼んでいます。しかしこのままでは「くす玉」が開きっぱなしになるので、容器の下側でロックします。

 使用時には「くす玉」に長い紐をつけ、ボトル内にアジなどの餌を入れてから、ロック後ゆっくり沈めます。餌はボトルに入っているため、中層の魚に食べられることなく水底に着きます。水底に触れるとロックが解除され、「くす玉」が開いて、中から餌が落ちるという仕組みです。

【くす玉による給餌の動画】
Windows Media形式 QuickTime形式
 
 この「くす玉」は、材料も特殊なものを使用せず、安価で、仕組みが単純で手作り可能なうえ、壊れても修理が容易です。何といっても、人が潜らずとも、底にいる魚に効果的に餌を与えられる、とても優れモノといえます。この「くす玉」は現在、葛西臨海水族園東京の海エリアの「渚の生物」水槽などでサメ類などの餌やりに活躍しています。

写真:くす玉型の給餌器

〔葛西臨海水族園飼育展示係 田辺信吾〕

(2013年09月13日)



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