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卵を口の中で守る魚たち
 └─2013/05/17

 葛西臨海水族園世界の海コーナーの「地中海」水槽では、カーディナルフィッシュが卵を保護しているところを見ることがあります。

 カーディナルフィッシュは、地中海やアフリカ西岸の温帯域に分布するテンジクダイ科の魚で、全身の鮮やかな赤い色がひときわ目を引きます。水深200メートルよりも浅い岩場などで、小さな甲殻類などを食べてくらしています。

 水槽の中にいるカーディナルフィッシュを見ると、下アゴが少しふくらんだ個体に気が付くことがあります。これは卵を口にくわえて敵から守っているオスです。カーディナルフィッシュなどテンジクダイのなかまは、メスが産んだ卵をすぐにオスが口の中に入れて、孵化するまで保護する習性があります。

 最初はオレンジ色をしていた卵が、発生が進むにつれて次第に黒ずんでくるようすが、観覧側からも観察できます。

 卵を口の中に入れて守る魚としてはほかに「バハ・カリフォルニア」水槽で展示しているファインスポッテッドジョーフィッシュがいます。全長40センチくらいまで成長する大型のアゴアマダイ科の魚で、特徴的な大きな口を使って上手に巣穴を掘ってくらし、カーディナルフィッシュと同じようにオスが卵を口内保育します。

 水槽では、孵化まで10日くらいかかりますが、その間オスは断食をしているわけではなく、巣穴の中に卵を一度置いてから餌を食べに出て来ることもあります。また卵に新鮮な海水を当てるため、口の中で卵を動かすようすも観察できます。

 運がよければ、かいがいしく卵の世話をする魚たちに出会えるかもしれません。

写真上:下アゴがふくらんだカーディナルフィッシュ
写真下:ファインスポッテッドジョーフッシュ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕

(2013年05月17日)



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