ニュース
ダーウィン出張報告2 「ナーサリーフィッシュを食べてみた!」
 └─2011/07/29

 私たちダーウィン調査隊は、トラブルなく採集を終えることができました。日本に向けて発送したナーサリーフィッシュ(以下ナーサリー)は、成田空港から葛西臨海水族園に無事到着しました。いったん裏側の予備水槽で飼育しながら採集や輸送時の傷を治し、病気を持っていないかチェックしながら餌付けもおこないます。ダーウィンで得られた貴重な情報とともに、水槽内での飼育や繁殖にもチャレンジしていきたいと思います。

 ダーウィンの位置するオーストラリア北部海岸地域は、熱帯性気候に属していて雨期と乾期に季節が大きくわかれています。私たちが訪れた6月は乾季にあたり、川の水位は低下し、森は乾燥していて、いたるところで山火事が起こっていました。

 海岸にはマングローブや干潟が広がり、陸地はユーカリを中心とした森林で、ワラビーや雨季にはエリマキトカゲなどを見ることができます。

 マングローブ帯には日本でも食べられているマッドクラブ(ノコギリガザミ)が生息しています。ここでは、甲長25センチメートルを超えるようなとても大きな個体が獲れます。

 海には大小いくつもの川が流れ込んでいて、河口や河口に近い海ではバラムンディというアカメ科の魚が生息しており、釣りの対象魚としても有名です。白身のおいしい魚で、ダーウィンではフィッシュアンドチップスとしても売られているポピュラーな魚です。これらのご当地食材を今回の採集で世話になった漁師さんからいただき、味わうことができました。

 さて、ナーサリーは刺し網によって採集しますが、残念なことに網に絡まって死んでしまう個体も少数います。地元の人にもほとんど知られていないこの魚は、漁師さんに聞くととても美味しいとのこと。こんな機会はめったにありません。早速死んでしまったナーサリーを食べてみることにしました。バター焼きで食べてみたところ、白身で臭みはまったくなく、舌平目に近いとても上品な味でした。

 また、肋骨に囲まれた部分が箱状になっている特殊な構造も確認できました。これは視界のきかない濁った川で音や振動を感じとるのに役立っているのではないかと考えられています。改めてナーサリーの不思議さを再確認しながらおいしくいただきました。

写真上:バター焼きのナーサリーフィッシュ
写真下:マッドクラブ(ノコギリガザミ)

〔葛西臨海水族園飼育展示係 中村浩司〕

(2011年07月29日)



ページトップへ