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ダーウィン出張報告、ナーサリーフィッシュの採集
 └─2011/07/15

 葛西臨海水族園で展示している生物の中で、ここ水族園でしか見ることができない魚がいます。それは「ナーサリーフィッシュ」というオーストラリアに生息する魚です。この魚のオスは、額にあるフックに卵をひっかけ、孵化するまで保護するという、とても珍しい特徴があります。

 2011年6月下旬から7月上旬まで、そのナーサリーフィッシュを採集するため、オーストラリアのダーウィンに行ってきました。ナーサリーフィッシュの採集には、魚を網にからませて獲る「刺し網」と呼ばれる漁具を使用します。

 採集場所である川には、大きなものでは4メートルを超えるようなイリエワニがいたるところにいます。泥で濁った川は何が水中に潜んでいるか分からず、水に少し手を入れただけでワニに襲われる危険あります。そのため常に周囲を注意していなければなりません。

 さて今回は、ナーサリーフィッシュの生態を調査するため、刺し網以外にも、川の中を漂う小さな生物を集めるためのプランクトンネットを初めて使いました。するとエビのなかまやいろいろな魚の稚魚に混じって、孵化後間もないと思われる体長10ミリメートルほどのナーサリーフィッシュの稚魚が見つかりました。

 過去に、卵を保護しているオスを3度採集したことがありますが、そのオスが川のどのあたりにいるかはまだ明らかではありません。今回、稚魚が採集されたことから、近くに卵を保護していたナーサリーフィッシュのオスがいるのではないかと思われます。

 額のフックに卵を付けて保護している最中のオスもその上流にいるのではないかと、期待が高まる中で採集を続けましたが、残念ながら見つかりませんでした。

 今回の出張では、採集したナーサリーフィッシュ43尾を無事に水族園へ届けることができました。オスが額に卵を付けて泳ぐ姿が見られる日を楽しみにしていてください。

写真上:採集風景
写真中:オスのナーサリーフィシュ
写真下:ナーサリーフィッシュの稚魚

〔葛西臨海水族園調査係 小味亮介〕

(2011年07月15日)



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