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ダイバーに襲いかかるタコ? ミズダコの展示を始めました
 └─2011/01/14

(2011年7月22日追記──申しわけありませんが、現在、ミズダコは展示しておりません。)

 ミズダコはタコのなかまでは世界最大。北日本から北米カリフォルニアにかけての北太平洋に広く分布しています。日本の近海ではふだんは水深200メートル以上でくらしていますが、冬場は沿岸の浅いところにも現れます。腕を拡げた長さは3~5メートル、体重10~50キログラムにもなり、最大では9.6メートルで272キログラムという記録があります。

 タコのなかまの寿命はふつう2~3年で、ミズダコの場合も3~5年程度です。カニやエビ、貝、魚、ウニなどを食べます。

 葛西臨海水族園の「海藻の林」水槽にミズダコがやってきたのは2010年12月7日のことです。しかし、その後しばらくは底の岩の間に隠れていて、観覧側からは見えない状況が続いていました。そのため、餌はダイバーが水槽に潜って与えていました。

 ちょうど1か月たった2011年1月7日の朝、腕を拡げて2メートルほどのミズダコが、水槽内を活発に歩きまわるようすを観覧側から初めて見ることができ、ようやく慣れてきたのかとホッとしました。でも、その日はダイバーが潜ってアクリル面を清掃する日でした。

 ダイバーには、ミズダコの習性を説明し、潜ったら最初に餌を与えるように伝えました。その前の週までは底でじっとしていて、餌を与えてもその場を動くことはなかったので、ダイバーも油断していたのでしょう。その日は、餌を与える前にダイバーがミズダコにからみつかれ、頭からすっぽり包み込まれるような状態になってしまったのです。それはまるで、ミズダコに襲われて、ダイバーが食べられているかのようなショッキングな光景でした。

 結局、大きなカニを2匹、アジ15匹、イワシ5匹を与えて、ようやくミズダコはおとなしくなりました。ダイバーはベテランだったので落ち着いていて、とくに問題はありませんでしたが、心構えができていなかったらさぞかし驚いたことでしょう。

 じつは、私は以前心構えのない状態で、水槽を潜水中にミズダコに抱きつかれた経験があります。すごい力で締め付けてきて、これは大変なことになったと思いましたが、そのときにも餌を与えて事なきを得ました。そうです、ミズダコはダイバーによく抱きついてくるのです。

 海の中でダイバーがミズダコに襲われた、という話を聞いたことがあります。ダイバーに抱きついてくる理由ははっきりしませんが、自分のなわばりに入ってきた侵入者への威嚇の意味、あるいは、とても好奇心が強いので、何がきたのかの確認や遊びのような意味かも知れません。いずれにしても、食べられたとか咬まれたという話は聞いたことはありません。

 とても頭のいい生き物ですから、ダイバーから餌をもらえることはすぐに学習するはずです。同じタコのなかまのマダコも、慣れてくると餌を与えるときに腕にからみついてくることがあります。抱きついてくるミズダコは、喜んで尻尾を振ってやってくる犬のようなもので、きっと「餌をよこせ」ということなのでしょう。

 展示を始めたミズダコは腕を拡げて2メートルちょっとのミズダコとしてはやや小さめの個体ですが、それでもかなりの迫力があります。ただし、まだ慣れていないので、動き回ることは少ないようです。

 「海藻の林」水槽にダイバーが入ってアクリルを清掃するのは、作業の都合で変更する場合もありますが、通常は金曜日の午後1時過ぎからです。そのときにはミズダコはきっと現れるはずです。でも、ショッキングな光景はお目にかけないようにしたいと思います。

写真上:ダイバーに襲いかかる(?)ミズダコ
写真下:展示水槽のアクリル面を移動するミズダコ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 荒井寛〕

(2011年01月14日)



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