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毒をもつ生物(1)
 石に化ける静かな殺し屋、オニダルマオコゼに要注意!
 └─2010/07/16  

 蒸し暑い梅雨があけて本格的な夏休みが待たれる季節となりました。みなさんはどんな夏休みを思い浮かべていますか? 酷暑を避け心地よい涼を求めて、山間や川岸のキャンプ場などで休暇を満喫することや、あるいは、暑くても爽快な汗をかいて心身ともにリフレッシュできる南の島ですごす、というのも魅力的ですね。

 しかし、サンゴ礁が見られるような暖かい海に入るときには、十分に注意してもらいたい魚がいます。それはカサゴのなかまの「オニダルマオコゼ」です。サンゴ礁や浅い岩礁域にくらしていて、海の中ではほとんど体を動かさず、海底の砂の中でジッとしています。体の形や色がゴツゴツとした岩にそっくりなので、初めて見た人は、オニダルマオコゼとは気づかないことでしょう。

 英語では「ストーンフィッシュ」(石の魚)と呼ばれ、そのじつに見事な擬態のようすは、魚の中でもトップクラスではないかと思えるほどです。

 オニダルマオコゼで一番に気をつけてもらいたいことは、巧みな変装だけでなく、魚類の中でも一、二を争う毒をもっていることです。背びれの鋭いトゲには人が死んでしまうほどの猛毒があり、知らずに足で踏みつけようものなら、直ちに病院へ行き適切な処置を受けなければならなくなります。

 葛西臨海水族園世界の海「モーリシャス」の水槽では、2匹のオニダルマオコゼを展示しています。体表には、水槽の中の岩と同じコケが付着し、ふだん見慣れている私たちでも遠くからでは、岩との区別に迷うことがあります。また、この魚はときどき体表をきれいにするためか、魚のなかまでは珍しく「脱皮」をすることがあり、ちぎれた古い表皮が水槽の中を漂っていることがあります。

 自分では動かずに、目の前を通りがかった餌を一瞬で捕食する待ち伏せ型の食生活なので、他の魚と比べてエネルギー必要量が少なくてよく、そのため給餌は週1回という方法で飼育しています。餌を食べるようすをビデオで紹介しますので、ふだんジッとしているオニダルマオコゼからは想像がつかないような素早い動きを実感してください。

 ・動画:オニダルマオコゼ、捕食の瞬間
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〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕

(2010年07月16日)



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