ある朝、おもしろい光景に出会いました。自分の貝殻の上にイソギンチャクをつけて、いっしょにくらすケスジヤドカリ2匹のシーン。2匹のヤドカリのうち大型の個体(以下「ダイ」)は、二つの大きなイソギンチャクを貝殻につけています。もう1匹はかなり小さな個体(「ショウ」)で、イソギンチャクを一つしかもっていません。
2匹は接近し、緊張した雰囲気……。ダイは、前日死んだ別のヤドカリの殻からひきはがしてきたイソギンチャクを、自分の貝殻につけようと悪戦苦闘しているところでした(写真上)。しかし、背中にスペースがないためか、うまくいきません。それを、近くでものほしげ(?)に眺めるショウ。
約30分後、ダイはあきらめたのか、足早に去っていきました。するとショウは、イソギンチャクに駆け寄り、しっかとかかえたのでした(写真下)。夕方見に行くと、ショウの貝殻の上で大きなイソギンチャクが触手をひろげて揺れていました。「やったぜショウ!」と心の中で叫んでしまいました。
ケスジヤドカリがイソギンチャクをほしがる理由──それは、刺胞から毒針を発射するイソギンチャクを貝殻につけていれば、敵におそわれる確率が低くなるからです。それにしても、イソギンチャクが武器になることをケスジヤドカリはいつ学んだのでしょう。
〔葛西臨海水族園調査係 天野未知〕
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