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大きな目と赤い体色──キンメダイ
 └─2009/04/03

 花盛りの季節を迎え、日に日に暖かさが感じられるようになりました。冬の間に、食卓にあがった魚、鮮魚売場で見かけた魚を思い出してください。名前にタイとつく、金色に輝く大きな目をした、赤い色の魚を見ませんでしたか? それがキンメダイです。脂がのる12月~3月が旬で、煮つけ、刺身、しゃぶしゃぶ、あら煮などで食べるとおいしい魚です。ここでは食べることから離れて、生物としてのキンメダイをご紹介しましょう。

 キンメダイは名前に「タイ」とついているものの、お祝いの席に出る尾頭つきのマダイとは別のなかまで、キンメダイ目キンメダイ科の魚です。太平洋、大西洋、インド洋、地中海の温帯域から熱帯域と世界中に幅広く分布し、おもに水深約 800メートルまでの深海にくらしています。

 深海にくらす魚の特徴のひとつが「大きな目」。店頭に並んでいるキンメダイも、金色に輝く大きな目が目立ちます。陸上にくらべて光がほんのわずかしか届かない深海では、大きな目が光を感じるのに都合がよいのでしょう。また、そのわずかな光を効率よく利用するため、目の裏側に「反射板」を備え、目に入った光を増幅させています。水槽の前で、見る角度を変えるとキンメダイの目が光って見えることがあるので、ご来園の際は試してみてください。

 キンメダイの水槽では、他の水槽にないものがアクリルガラスに貼ってあります。それは、丸いのぞき窓の部分に貼られた青い透明フィルム。このフィルムを通してキンメダイを見ると、鮮やかな赤い体が少し黒ずんで見えます。

 太陽の光は海の中に差し込むと、浅いところで赤い色の光が吸収されてしまうので、深くまで届くのは青い色の光です。キンメダイがくらす深海にもわずかな青い色の光しか届かず、赤い体色は黒っぽく見え、薄暗い深海では背景に溶け込む保護色になっていると考えられています。深海にくらす生物に赤い体色のものが多いのも、身を守るのに利点があるのでしょう。

 今度食卓でキンメダイを食べるときには、光のほとんど届かない冷たい深海でくらすキンメダイについて、箸をのばす前に少し思い出してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕

(2009年04月03日)



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