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ナーサリーフィッシュの採集
 └─2008/11/28

 葛西臨海水族園では昨年(2007年)に引き続き、11月初旬、オーストラリア北部のダーウィンでナーサリーフィッシュの採集をおこないました。採集をおこなった場所は、近郊を流れる、ジャンピングクロコダイルクルーズで有名なアデレード川流域です。

 無数のハエ、蚊、アブ、サンドフライ、そして迫り来るイリエワニの恐怖と闘いながらも、今年の採集は順調に進み、水族園へ輸送するのにじゅうぶんな魚を確保できたところで、狙いを切り替えました。狙うは卵を守っているオス。

 ナーサリーフィッシュには、メスが生んだ卵を、オスが額にあるフックにつけて守るという変わった習性があります。現地での産卵期は7月から11月までのあいだといわれており、この時期は卵を守っているオスを採集できる可能性があるのです。

 しかし、水族園開園以来、現地で長年採集をおこなってきたものの、卵を守っているオスを採集できたのはこれまでにわずか2個体のみ。少ない可能性にかけて期待を胸に網を引き続けていると、ついにそのときがやってきました!額に卵をつけているオスが網にかかっているではありませんか!!

 興奮を押さえつつカメラのシャッターを切り、数枚の写真を撮影した後、魚を網からとりはずしにかかりました。ところが、不運なことに網が卵にがっちり食い込んでしまっています。何とかはずそうとがんばったのですが、結局、オスの額から卵が外れてしまいました。残念無念……。

 水族園に輸送したナーサリーフィッシュは無事に予備水槽に収容され、展示水槽にデビューする日を待っています。そして、いつの日か、卵を守っているオスのナーサリーフィッシュが水槽で泳ぐすがたをごらんいただけるよう、チャレンジしていきたいと思います。

・東京ズーネットBBの動画もごらんください!
 「動かない魚、ナーサリーフィッシュ」(2007年03月撮影)

写真上:アデレード川
写真中:網にかかったナーサリーフィッシュを取り込む
写真下:額に卵をつけたオスのナーサリーフィッシュ
(写真はいずれも筆者撮影)

〔葛西臨海水族園飼育展示課調査係 佐藤薫〕

(2008年11月28日)



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