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南極レポート[3]南極到着!──プンタアレナスからキングジョージ島へ
 └─2002/02/15

 2002年2月9日、予定通りキングジョージ島に到着。プンタアレナスから双発の飛行機で3時間です。キングジョージ島は南極半島の先端にあるサウスシェトランド諸島のひとつで、南緯62度12分、西経58度57分に位置します。日本からの直線距離は約18,000キロメートル。

 現在、この島は短い夏をむかえていますが、気温は0~5℃ほどしかありません。島に雪はほとんどなく、岩ばかりの荒涼とした景色がつづいています。わたしたちはこの島のエドアルド・フレイ・チリ空軍基地に滞在し、南極圏の海洋生物の採集をおこなっています。

 海中採集はドライスーツによるスキューバダイビングです。水温は1℃以下。素手では5秒とつけていられないほど冷たい海ですが、海中には意外なほど多くの魚や貝などの無脊椎動物がみられます。水中で採集をしていると、ヒゲペンギンが遊びにきたりもします。

写真上:等脚類の一種「グリプト」のなかま Glyptonotus antarcticus。グリプトはダンゴムシと同じ等脚類
写真下:ヒゲペンギン

◎南極に関する質問へのお答え

 さて、みなさんからいただいた質問にお答えしましょう。

Q1──南極には何種類ぐらいの動物がいるの?

A1──とてもむずしい質問ですね! 南極の海にすんでいる魚類は約 200種といわれていますが、そのほかにも、アザラシ類、クジラ類などの大型哺乳類をはじめ、巻貝、ヒトデやウニ、カニやエビなどの無脊椎動物、さらには目にみえない小さなプランクトンまでふくめると、海の生き物だけで、とてもたくさんの種類の生物がすんでいることになります。
 陸上にも、ペンギンを含めた鳥類や、昆虫が生息しています。というわけで、正確な種数はお答えできないのですが、わたしたちがキングジョージ島で観察した代表的な生き物を紹介しましょう。

 【陸上】
  哺乳類───ミナミゾウアザラシ、ヴェッデルアザラシ
  鳥類────ヒゲペンギン、アデリーペンギン、ジェンツーペンギン、
        ミナミオオフルマカモメ、ナンキョクオオトウゾクカモメ、
        ナンキョクアジサシ
 【海中】
  魚類────ブルヘッドノトセンなどノトセニアのなかま
  貝類────ナセラコンキナ(カサガイのなかま)
  節足動物──グリプトノートゥスアンタークティクス(上でご紹介した
        「グリプト」)など

Q2──南極に昆虫っているのですか?

A2──上でお答えしたとおり、昆虫もすんでいます。キングジョージ島のある南極半島周辺には、トビムシ類が数種とユスリカのなかまが1種知られています。しかし、残念ながらこれらの昆虫はからだが小さいため、わたしたちは見たことがありません。

Q3──南極では植物は育たないイメージがありますが、実際はどうですか?

A3──植物の専門家ではないので、くわしいことはわかりまませんが、みなさんが一般にイメージするような植物は見られません。わたしたちの見るかぎり、かわいた岩肌には地衣類が、湿地にはコケのなかまが見られます。また、あまり多くはないようですが、南極半島以北には、種子植物であるナンキョクコメススキやナンキョクミドリナデシコが自生しているようです。
 なお、年代はわかりませんが、木の化石があちこちで見つかることから、太古の時代には、この地にも森林があったと思われます。

Q4──ペンギンは鳴きますか? なかまどうしではどのようにコミュニケーションをとるのですか?

A4──ペンギンも鳴きます。葛西臨海水族園で展示しているフンボルトペンギンやイワトビペンギンをじっくり観察してみてください。おたがいに鳴き声をかわしあっています。ペンギンは鳴き声やディスプレイをとおして、親と子、雄と雌、なかまどうしで語り合うことができるのです。
 ペンギンのコミュニケーションについてはさまざまな研究あります。参考書を1冊ご紹介しておきましょう。『ペンギンは何を語り合っているか──彼らの行動と進化の研究』ピエール・ジュバンタン著、どうぶつ社、本体価格2,200円。

 ほかにも質問をいただいていますが、つづきは次回にお答えします!

〔葛西臨海水族園調査係 松山俊樹@キングジョージ島〕

(2002年02月15日)

◎これまでの「南極レポート」(2002年03月01日追記)
[1]出発直前──南極圏での採集・調査に行ってきます(2002年2月1日)
[2]南極前夜──成田からサンチャゴ、そしてプンタアレナス到着(2002年2月8日)
[3]南極到着!──プンタアレナスからキングジョージ島へ(2002年2月15日)
[4]採集終了──発送準備完了!(2002年2月22日)
[5]最終回──採集個体、無事到着(2002年3月1日)



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