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「童心居」の垣根を作りました
 └─2007/05/04

◎文化園四季折々

 「あかとんぼ」や「シャボン玉」など、数多くの名作を残した詩人・野口雨情は、書斎を「童心居」と名づけ、創作活動をおこないました。武蔵野の地を愛した雨情の童心居は、現在、井の頭自然文化園に移築され、公開されています。

 当園ではこの童心居を大切に管理していますが、現在、その垣根を作りかえるとともに、新しい垣根も作っています。

 垣根には多くの種類があり、それぞれに名称があります。名称の由来はさまざまで、寺院の名や設置された場所、形状、地名、素材、人名などにわけることができます。また、その構造は複雑で、親柱(おやばしら)、間柱(まばしら)、組子(くみこ)、立子(たてこ)、胴縁(どうぶち)、押縁(おしぶち)、縄掛け、むめ板、巻立子(まきたてこ)など、各パーツに名称があります。

 現在作っている垣根は6種類。まず、庭門の両翼は、代表的な足下垣(あしもとがき:丈が低い)の「金閣寺垣」で、これは「立子」(縦方向にわたす部材)と、真竹の半割りを「押し縁」(おしぶち:立子を押さえる部材)にした、安定感のある垣根です。

 外周の石垣の上には「銀閣寺垣」を作り、また一部には「建仁寺垣」を作りました。これらは遮蔽垣(目隠し用の垣根)としてよく作られます。水屋付近の袖垣(そでがき:縁先の端などに置く垣)は、昔の雨具である蓑が名前の由来となっている「蓑垣」です。

 蹲踞(つくばい:手を洗い、口をすすぐ「手水鉢」のあるところ)付近の袖垣は、黒竹の枝を使った「竹穂垣」を作成中。この垣は、見た目以上に手間がかかります。そしてこれも垣根?と疑ってしまうほど、竹垣の中ではもっとも簡素な「ななこ垣」。

 このほか、当園では正門を入った所に「御簾垣」(みすがき)、しゃくなげ園を囲った透かし垣の定番「四つ目垣」、そしてそのとなりには、曲線の美しい「光悦寺垣」など、じつにさまざまな垣根が見られます。

 垣根づくりの作業をしていると、来園者の方から多くの質問をいただきます。垣根の名前、各種の結束方法、そして「銀閣寺垣」や「建仁寺垣」の際に使う繰り針(縄がけに使う道具)についてなど……。

 かつて、竹は日本人の生活には欠かせない自然素材でしたが、今日、ちまたで見られる垣根の多くは竹ではなくプラスチック製です。ホンモノの竹とホンモノの職人(?)が手間ひまかけて作った垣根を、井の頭自然文化園にぜひ見に来てください。また、作業しているすがたを見かけたら、お気軽に声をかけてください。

〔井の頭自然文化園施設係 星野真一〕

写真上:野口雨情の庵「童心居」
写真下:「蓑垣」の作業中

(2007年5月4日)



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