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ツシマヤマネコまもなく来園!──2006/11/16

 ツシマヤマネコは、長崎県の対馬だけに生息するネコ科の動物。天然記念物に指定されている貴重な動物です。そのツシマヤマネコが2006年11月19日、井の頭自然文化園にやってきます!

 2005年の環境省の調査によると、野生のツシマヤマネコは80~110頭しか残っていないと考えられています。日本の野生動物の中でも、絶滅の危険が非常に高い種です。現在、環境省対馬野生生物保護センターと福岡市動物園で繁殖をめざして計25頭を飼育していますが、飼育している施設の数が少ないと、感染症や災害などの影響で多くの個体が失われるおそれがあります。

 そこで、危険を分散するために、井の頭自然文化園と、よこはま動物園(ズーラシア)でもツシマヤマネコの飼育に取り組むことになりました。井の頭自然文化園に来園するのは、対馬野生生物保護センターからオス1頭(2002年4月9日福岡市動物園生まれ、個体番号No.12、写真上)と、福岡市動物園からメス1頭(2006年4月1日福岡市動物園生まれ、個体番号No.38、写真下)の2頭です(よこはま動物園にも、オスとメス1頭ずつが移動します)。

 なお、これらのツシマヤマネコは、将来、自然にもどすことが考えられますので、人になれるのを防ぐために原則として非公開です。申し訳ありませんが、来園者のみなさんはごらんになれません。希少野生動物の保護は動物園の大きな役割のひとつです。こうした活動をつうじて、ツシマヤマネコをはじめとした日本の野生動物の状況を多くの方々に知っていただこうと考えています。

国内の飼育状況(今回の個体移動後)
 環境省対馬野生生物保護センター:7頭
 福岡市動物園:14頭
 井の頭自然文化園:2頭
 よこはま動物園(ズーラシア):2頭

ツシマヤマネコについて
 長崎県対馬だけに生息する野生ネコ科動物で、1971年には国の天然記念物、1994年には国内希少野生生物種に指定されました。約10万年前に大陸から渡ってきて、東アジアから南アジアに広く分布するベンガルヤマネコの亜種と考えられています。体重は3~5キログラム、体長50~60センチで、耳の裏に白斑があるのがイエネコとちがうところです。
 1960年代の調査では、250~300頭が生息していると考えられていましたが、交通事故や開発による環境の悪化などで個体数が減少し、現在、野生下では80~110頭しかいないと推定されています。

飼育下繁殖
 絶滅の危険があるツシマヤマネコを保護するため、環境省では1993年に「ツシマヤマネコ人工繁殖基本計画策定調査」を実施し、1996年から対馬野生生物保護センターで保護個体の飼育を開始。1999年から福岡市動物園でも飼育を始め、2000年4月には初めての繁殖に成功しました。福岡市動物園でこれまでに誕生したツシマヤマネコは計20頭です。

井の頭自然文化園でのネコ科動物飼育
 東京都の動物園では、希少野生動物の繁殖をすすめる「ズーストック計画」を1989年に制定し、日本国内の希少動物としてツシマヤマネコの保護活動にも取り組むことになりました。井の頭自然文化園はテンやアナグマ、ニホンリスなど日本産動物の飼育に力を入れていましたが、ツシマヤマネコの近縁種(ベンガルヤマネコの別亜種)であるアムールヤマネコの飼育を2000年に開始、2006年までに20頭以上の繁殖に成功しています。井の頭自然文化園では、こうした技術を活用してツシマヤマネコを飼育するとともに、ヤマネコをはじめとする日本の野生動物の現状を紹介していくつもりです。

写真上:オス、個体番号No.12
    2002年4月9日福岡市動物園生まれ
    対馬野生生物保護センターから来園
写真下:メス、個体番号No.38
    2006年4月1日福岡市動物園生まれ
    福岡市動物園から来園

(2006年11月16日)



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