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ツシマテンがやってきた[後編]
 └─ 2024/10/31
 「ツシマテンがやってきた[前編]」では、ツシマテンの「ちゅう」(オス)が対馬から井の頭自然文化園にやってくるまでをご紹介しました。後編では、展示場にデビューしてからのようすをご紹介します。


ツシマテンの「ちゅう」

初めての外の世界

 無事に井の頭自然文化園内の病院で検査を終えたツシマテンは、2024年7月1日の休園日に展示場デビューを果たしました。展示場に入ると早速、走り回ってみたり、遠くから聞こえる音に耳を澄ましてみたり、土を掘ってみたり、植物をかじってみたり……。生まれて初めて体感する新鮮な外の世界を楽しんでいるように見えました。


展示場にデビューした日

意外なえさの食べ方

 野生のテンは、ネズミやトリ、カエル、昆虫といった動物や、イチゴやカキといった果物など、なんでも食べる雑食性です。そんな野生でのえさメニューを念頭に、井の頭自然文化園でも鶏頭や馬肉、煮干しなどの動物由来のえさや、バナナや煮イモ、リンゴなどの果物、栄養バランスの調整のためのドッグフードなどを与えています。

 対馬の「どうぶつたちの病院」でヒトの手によって育てられてきたツシマテンは、当園に来るまでずっとドッグフードとキャットフードを食べてきました。そのためか、当園で与えている鶏頭や馬肉、バナナなどに対しては、最初はあまりよい反応を示しませんでした。すべてのえさをトレイに並べて与えると、最初にドッグフードとキャットフードをほとんど食べ終えてから、バナナや煮干しを食べ始めるのです。

 井の頭自然文化園でこれまで飼育していたホンドテンたちはどの個体も特にバナナが大好物で、えさを与えるとものすごい勢いでバナナから食べ始めるため、ツシマテンのこの反応は意外でした。


ツシマテンのえさ

 また、大きなものをかじるのが少し苦手なようでした。ドッグフードとキャットフードはカリカリと音を立てながら軽快に食べ進めるのに対して、バナナや煮干し、ミンチ状にして与えた鶏頭などの食べ方を見ていると、動きがぎこちなく、あまりスムーズではなかったのです。

 その後、1週間ほどようすを見ていると、しだいにバナナや鶏頭から食べ始めるようになりました。最近ではすっかり食べ方のぎこちなさもなくなり、スムーズに食べるようすが観察できるようになりました。


最近ではバナナや鶏頭から食べ始めるように

気になる行動

 順調に展示場に慣れてきたツシマテンですが、しだいに対馬の「どうぶつたちの病院」で話をうかがっていた気になる行動も見られるようになりました。ときどき大きな声をあげながら、自分のしっぽにしつこくじゃれついたりするのです。どうやら本気で噛んでいるわけではなさそうなのですが、大きな鳴き声に驚く来園者も多く見られました。くらしている環境が変わるだけでは、この行動はなくならなかったようです。

 そこで自分のしっぽから気をそらすために、いくつかの対策を試してみました。野生のテンのようにえさを探して食べることに時間を費やすことができるように展示場にえさをばらまいて探させてみたり、転がすとえさが出てくる仕掛けのフィーダーを置いてみたり、噛みついたりして遊べるように麻の布を入れてみたり……。ヒトに育てられたということも関係してか、見慣れないものにも警戒することなく、すぐに興味津々で使ってくれました。


フィーダーを使うようす

 今のところ麻の布が特に気に入ったようで、噛みつくだけでなく、体をこすりつけたり、持ち運んだり、下に敷いて眠ったりと、自由に使っているようです。現在は日々のようすを注意深く観察しているところですので、どうぞ温かく見守ってください。


麻布に体をこすりつけるツシマテン

ツシマテンの観察ポイント

 これからの季節には、夏毛から冬毛へと毛の生え替わりが進むはずです。テンは、夏毛と冬毛の姿がまるで別の生きもののように異なるのが特徴です(関連記事「大変身!?ホンドテンの衣替え」)。また、この夏毛と冬毛の色あいは、ホンドテンとツシマテンで異なります。

夏毛のホンドテン
冬毛のホンドテン

 ツシマテンは、その冬毛のようすから対馬では「わたぼうしかぶり」とも呼ばれます。いったいどんな姿になるのでしょうか? ぜひ隣の展示場にいるホンドテンと見比べてみてくださいね。

〔井の頭自然文化園飼育展示係 大河原〕

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ツシマテンの「ちゅう」が対馬から来園しました(2024年07月02日)

(2024年10月31日)



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