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生後1年をむかえたニホンカモシカ飼育奮闘記
 └─ 2024/04/27
 井の頭自然文化園では、現在3頭のニホンカモシカを飼育しています。そのうちの1頭、メスの「ココ」は2023年4月20日に生まれ、先日でちょうど1年を迎えました。

 生後1年を迎えたことは、きっと動物は何も気がつかないことでしょう。しかし飼育担当者にとっては少し意味があることでした。実は生後1年に満たないニホンカモシカは病気による死亡例が非常に多く、全国的にみても飼育下で生まれた個体の約40%が1歳になる前に死亡しています。現在とても健康なココですが、この1年で2回ほどひどく体調を崩すこともあり、担当者としてニホンカモシカの飼育の難しさを痛感した1年でした。

 ココは生後7日目より体重計に乗るようになり、そこから健康チェックのため1週間おきに体重を量ることができるようになりました。しばらくは体重が右肩上がりの順調な成育をしており、とても安心していました。


生後1か月のココ。左は母親のすずな

 ところが生後43日目にひどい下痢がみられ、どうやら胃腸のどこかに異変があると推測されました。薬を飲ませ、ときには捕まえて直接薬を注射し、獣医師と密に相談し手をつくしましたが、一向にココの便状はよくなりません。幸い食欲が落ちることはありませんでしたが、体重が減少することもあり大変肝を冷やしました。

 胃腸を正常な状態に戻すためには、固形飼料(ペレット)のような人が作ったえさではなく、ニホンカモシカ本来のえさである樹木の葉でお腹を満たす必要があると考えました。そのためよく食べる樹木を園内で必死に探し周り、それをふだんよりたくさん食べさせることで、生後122日目にようやく便状を正常に戻すことができました。

 数か月の下痢と戦った後、しばらくは健康にくらしていたココですが、2024年2月下旬、また突然異変が起こりました。どうも歩き方に元気がなく、食欲も少し落ちているようすがみられました。行動の変化は小さいものでしたが、体重を量ってみるとなんと前週から約3kgも落ちてしまいました。獣医師とは肺炎を疑い、いくつかの薬を試しました。なかなか状態が回復せず心配な日々が続きましたが、1か月ほどでなんとか状態を元に戻すことができました。


 生後1年を迎えることはできましたが、ココはまだ成長期であり完全に安心はできません。しかしこの経験から動物飼育において、日頃の健康チェックと獣医師とのチームワークの大切さを改めて認識しました。この困難を共に乗り越え、たくましい顔つきになったココ。ぜひご覧になっていただければと思います。


左からすずな(母親)、生後9か月のココ

〔井の頭自然文化園飼育展示係 伊藤達也〕

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