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ニホンカモシカの体重測定
 └─ 2021/04/18
 動物の健康管理において、体重はとても重要な情報になります。やせすぎていれば栄養状態に問題がある可能性もありますし、逆に太りすぎていれば病気になったり、肢に過度な負担をかけたりしてしまうこともあります。見た目だけで確認できる動物もいますが、動物によっては実際に手で触って確認することもあります。しかし、見た目ではっきりと確認できず、かつ触って確認することもできない場合もあります。

 ニホンカモシカは非常に体毛が多いため見た目だけで体型を判断することが難しく、人が触るのも難しい動物です。捕獲や保定(何らかの方法で動物の体の動きを制限すること)をして確認することはできますが、作業者に危険が伴いますし、何より動物に多大な負担をかけてしまいます。そのためカモシカに「自分から体重計に乗ってもらい」体重測定ができないかと考え、昨年度取組みを開始しました。

 2020年5月初旬、家畜用に購入した体重計(計量台の大きさ:50cm×70cm)を使用し、チャレンジを開始しました。当初はカモシカが体重計に乗らなければ食べられない場所に嗜好性の高いえさを設置し、誘導を試みました。飼育係は安全のため、カモシカのいる部屋の外からそっと見守り、数値を記録します。えさの種類やその設置場所、実施する時間、体重計を置く位置など、何度も失敗と調整を繰り返し、数日の格闘の末なんとか体重計に乗ってもらうことができました。1回だけの数値では情報として少ないため、これを毎月繰り返しその体重の変化を追うことにしました。


 5月末、6月末と順調に計測することができましたが、7月20日に試みた際、暑さのためかカモシカの食欲が低下し、えさで誘導するのが困難になってしまいました。そこで今度はカモシカの好奇心旺盛な性格を利用し、えさがなくても体重計に乗らないかと考えました。
 カモシカは新しい物に興味を示す際、目の下の眼下腺(がんかせん)という穴から出る分泌液をこすりつけ、ニオイ付けをおこなう習性があります。その習性を利用し、よく眼下腺を擦りつける体重計の操作盤の高さを調整し、翌週の27日にはえさなしでの体重測定をおこないました。


 10月に入ると急激に食欲が増加したため、再度えさで誘導する形と併用し、現在も体重測定を継続しています。定期的に継続したためか、今年に入り食欲が少し低下してからも、体重計を設置するとすぐに乗ってくれるようになってきました。結果の数値を確認すると、季節による食欲の波と一致するように、32kg~37kgを推移していることが分かりました。カモシカ成獣♂では、体重が35kg~40kgであるという報告が多く、そのため現時点では良好な体型を維持できているのではないかと考えています。


 今後もできる限り継続しておこない、動物の健康管理に努めていきたいと思います。

〔井の頭自然文化園飼育展示係 伊藤達也、石田翼〕

(2021年04月18日)



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