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光る目、広がる目、縮む目──瞳孔とタペタム
 └─2021/02/21
 先日ムササビが写っている写真を整理していたところ、目の状態の変化がよくわかる写真を見つけました。

タペタムで光を効率よく利用する
 夜撮影した次の写真に見える2つの光る点は、ムササビの目です。暗い中で哺乳類などの動物に光があたり、目がキラッと光るのを見たことはありませんか? ヒトの目はこのようには光りません。


 じつはヒトとは違って、ムササビの目には網膜を通り越した後ろ側に鏡のような組織「タペタム」があります(輝板[きばん]とも呼ばれます)。目に入ってきた光は網膜を通り抜け、タペタムで反射して戻って網膜で再感知します。少ない光を効率よく利用するのこの仕組みのおかげで、ムササビなどの夜行性の動物は夜暗い中でも活動できるのです。

 なお、この写真で光っている目の光は、夜間監視用カメラから発せられた赤外線の反射です。写真に動物が感知しづらいとされている赤外線ですが、タペタムは赤外線も反射していることがわかりました。

ムササビの瞳孔にズームイン!
 次の2つの写真を比べてみてください。上は瞳孔が大きく、下は小さい状態です。撮影時間帯と場所はほぼ同じ。でも天気は曇りと晴れで、明るさの違う環境でした。暗いときは少しでも多く光を入れようと瞳孔が広がります。逆に明るいときは、まぶしくなりすぎないよう、目に入る光を少なくするために瞳孔が縮みます。右の写真は夕日に顔を向けており、瞳孔がピンホールのように小さくなっています。


上は曇りのときの撮影。下は晴れの日の明るい場所で撮影
(※拡大画像は瞳孔がわかりやすいように色調を調整してあります

 瞳孔の大きさが変わるようすは、私たちヒトでも見られます。鏡に自分の顔を映して、片目を手で覆ったり離したりしてみてください。確認できましたか? 外出の難しいコロナ禍でもできる、ちょっとした実験として試してみてください。(※強い光を見つめるのは目によくありませんので、ふだんの明るさで鏡に向かって試してみてくださいね。)

〔井の頭自然文化園飼育展示係 坂上琴音〕

(2021年02月21日)



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