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続々・新たな視点で見てみると[18]ゆらゆら揺れるしっぽのきもち──ヒガシニホントカゲの逃避行動
 └─2018/10/05

 井の頭自然文化園水生物館の周辺では本格的な夏が始まった後から、ニホンカナヘビやヒガシニホントカゲの幼体を見ることが多くなりました。どちらも小さくてかわいいのですが、ヒガシニホントカゲの幼体は鮮やかな青い尾をしているという特徴があります。


鮮やかな青い尾が目立つヒガシニホントカゲの幼体

 鮮やかな色は目立って天敵に見つかってしまいそうですが、狙いはまさにその目立つことにあるようです。トカゲは、捕食者であるヘビやイタチなどに見つからないように、ふだんは物陰に身を潜めていますが、運悪く見つかってしまったときには目立つ尾を襲わせて、得意のしっぽ切りで本体は逃げ延びるという戦術をとっていると言われています。

 ヒガシニホントカゲの幼体が目の前から逃げていく光景は、これまで幾度となく見てきました。たしかに鮮やかな青い尾が目立っていますが、これではやはりただ目立つだけで、天敵から見つかりやすくなっているだけのような気がしていました。


【動画】水生物館のバックヤードで見かけたヒガシニホントカゲの逃避行動

 ところが、今夏訪れた西表島でヒガシニホントカゲに近縁のイシガキトカゲの幼体に出会ったとき、「目立つしっぽ戦術」が有効かもしれないと思わせるシーンがありました。


【動画】西表島の林道で見かけたイシガキトカゲの逃避行動。
コバルトブルーの尾をフリフリ揺らされると視線がそこに釘づけになる

 イシガキトカゲの幼体も尾が鮮やかな青色なのですが、逃げるときに尾をフリフリ揺らしていることが多かったのです。この行動をされると、やはり目立つしっぽに意識が集中します。

 このしっぽフリフリをヒガシニホントカゲでは見たことがない気がするのですが、何か戦術に違いがあるのでしょうか?

 ──と書いて文章をまとめたのですが、その後、地元のヒガシニホントカゲでも尾を振るのが確認できました。


【動画】水生物館のバックヤードで見かけたヒガシニホントカゲの尾振り行動

 ただし、このときの状況は純粋な逃避行動と思えないところもあって、緊張状態が尾振り行動を起こさせたのかもしれないと思っています。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 三森亮介〕

(2018年10月05日)


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