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続々・新たな視点で見てみると[15]───一夜限りの翡翠色:ミンミンゼミの羽化
 └─2018/08/23

 8月もあと1週間。もう夏休みも終わりですね。井の頭自然文化園水生物館のまわりでは、アブラゼミやミンミンゼミ、ツクツクボウシにヒグラシなど、さまざまなセミの声が聞こえています。

 先日、仕事を終えて吉祥寺駅へ向かって歩いていたときのこと。公園内の薄暗い地面の上を小さなものがゆっくりと移動しているのに気づきました。近づいて見てみると、ミンミンゼミの幼虫が羽化する場所を探して歩いているところでした。


東京では都市部の公園などにも多いミンミンゼミ。体色に変化が
あるが、黒地に緑色の模様が入っている個体をよく見る

 せっかくの出会いなので、幼虫を観察しやすい枝に登らせて羽化のようすを撮影してみることにしました。


【動画】ミンミンゼミの羽化。映像のスタート時にだいぶ殻から出てきているのは、撮影者が
羽化開始を待てず居眠りしてしまったため……。羽化する場所が決まるまで動き回る。

 茶色っぽい幼虫の背中が割れると、きれいな青緑色をした成虫が出てきます。新成虫は腹の部分でぶら下がるような姿勢で、脚がしっかり硬くなるまで待ちます。その後、幼虫の殻につかまって全身を引き出し、羽化のクライマックス、翅を伸ばす時間を迎えます。

 翡翠色と表現できる美しい体色はこの時だけで、数時間後には黒っぽくなってしまいます。すべて透明だった翅には暗色の斑点が浮かび上がり、朝になると飛び立っていきます。


羽化直後のミンミンゼミ。翡翠色の体色と翅が、より繊細な感じに見える

 羽化の盛期は過ぎてしまいましたが、探せばまだ見つけられると思います。残り少ない夏休み、夜の公園で「翡翠色」を探してみるのはいかがでしょうか? お子さんはおとなの人と一緒にね。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 三森亮介〕

(2018年08月23日)


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