井の頭自然文化園は、(公社)日本動物園水族館協会と環境省が協力して進めるツシマヤマネコの保護増殖事業に2006年から参画しています。
現在国内でツシマヤマネコを飼育している施設は、長崎県対馬市にある環境省対馬野生生物保護センターと全国の動物園合わせて9箇所ありますが、施設ごとに役割を決めています。井の頭はアムールヤマネコ人工授精に成功した技術を応用し、ツシマヤマネコの人工繁殖を推進する役割を担っています。日本獣医生命科学大学、よこはま市繁殖センター、多摩動物公園野生生物保全センター、環境省と井の頭が1つのチームになり、人工授精の成功に向けて研究を続けています。
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お気に入りの場所でくつろぐ「ノリ」 | 色や形、においなどを確認しながら採取する糞 |
東京動物園友の会の雑誌「どうぶつと動物園」2018年春号のニュースで、2018年1月の人工授精についてお知らせしましたが、ツシマヤマネコの繁殖行動を把握することは大変重要です。ツシマヤマネコの繁殖期はおもに冬とされていますが、井の頭では糞を1年間継続して調べ、彼らのホルモンの動きを追っています。
ヤマネコはだいたい決まった場所に糞をするので、糞を見て健康状態を確認しながらていねいに採取し、多摩動物公園の野生生物保全センターに送り、分析してもらいます。ヤマネコのメスは、糞中にあるホルモンを調べることで発情のパターンや排卵の有無がわかるのです。
たかが糞、されど糞。井の頭のツシマヤマネコ飼育係にとっては、糞も大切で貴重な情報源なのです。
〔井の頭自然文化園飼育展示係 唐沢瑞樹〕
(2018年06月08日)