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かいぼりで見つけた水生物園の昔日
 └─2018/04/13

 井の頭公園の桜の花もすっかり散って、井の頭池もふだんどおりの落ち着いた日々に戻っています。しかし、1か月前の3月上旬には、環境改善のための「かいぼり」をおこなっていたため、井の頭池に水はありませんでした。


かいぼり中の井の頭池。水を抜いて外来種の駆除や水質の改善をおこなう

 このときは水生物館周辺の水路も一部が干上がっていたため、目立つゴミなどを拾おうと、水のない水路の底を歩いていたときのことです。ガラスのかけらが落ちていたので手に取ろうとすると、それは泥に埋まったビンの一部が見えていたものでした。掘り出して洗ってみると、底の厚さが偏っていたりガラスの中に気泡が見えたり、なにやら古いビンのようです。


ビンには「造製社會式株酒麥本日大」と書かれていた。右から読むと「大日本麦酒(ビー
ル)株式会社」。1906年(明治39年)、サッポロビール、ヱビスビール、アサヒビール
を造っていた会社が合併してできた巨大メーカー。1949年(昭和24年)に解体

 調べてみると、1915年(大正4年)に発売された清涼飲料水のビンによく似ていることがわかりました。ビンに書かれていた会社は1949年になくなっているので、およそ70から100年前に作られたビンということになります。

 そのころ、井の頭で何が起こっていたかというと、1917年:井の頭恩賜公園開園、1934年:井の頭池の中之島に井の頭恩賜公園動物園開園(現在の水生物園)、1936年:動物園内に水生物館開設、1942年:井の頭自然文化園開園(現在の本園。旧動物園は中之島水生物園と呼ばれる)などがありました。

1942年(昭和17年)に撮影された「中之島水生物園」入園門(写真提供:田畑貞壽)

 このビンは写真に写っているかつての水生物園の入園門のすぐそばで見つけました。もしかすると何十年も前に水生物園を見学した人が落とした物かもしれません。

 じつはビンの中身だったと思われる炭酸飲料は現在も販売されていて、私も子どもの頃に飲んだ記憶があります。今回、かいぼりでの思わぬ拾い物から自分の子ども時代、果ては開園当初の水生物園に思いをめぐらせることになりました。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 三森亮介〕

(2018年04月13日)


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