真夏の「いきもの広場」はあっという間に草丈がのび、まるで「雑草広場」のようになってしまいます。このため、8月14日に広場の草刈りをしていたところ、偶然にもチカラシバの根元に2つの卵を発見しました。
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いきもの広場 | 発見した卵 |
これは爬虫類の卵に違いない、径約1センチの卵を産みそうな爬虫類はなんだろう?と考え、調べたところ、『決定版日本の両生爬虫類』(平凡社)に「ニホンカナヘビは芝生や草の根元の土中に産み、一度に2〜6個産卵し鶏卵型、メスは卵の世話をすることはなく、同じトカゲの仲間のヒガシニホントカゲでは、石の下や土手の斜面の巣穴に産み、卵は5〜16個程産卵、メスは孵化まで世話をする」とありました。草の根元に産んでいたこと、卵が2個であったこと、成体がいなかったことなどからニホンカナヘビの卵かもしれないという推測にいたりました。
しかし、孵化してみないとはっきりしたことはわかりません。そこで、卵を持ち帰り孵化を目指すことにしました!
ちょうどその頃、資料館1階では、特設展「井の頭自然文化園で見つけたちいさないきものたち展」を実施しており(2015年8月23日で終了しました)、ニホンカナヘビも展示していました。そこで、その下に「ニホンカナヘビの卵?」と掲示して展示しました。
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特設展の展示 | プラスチックカップに入れた卵 |
まず、プラスチックカップに土を入れ、くぼみを作り、卵を置きます。乾燥を防ぐために、さらにケースの中に入れ、毎朝、土が乾かないようにスポイトで水を補給し、ようすを見ました(温度の測定はしませんでした)。卵は水分を吸収するのか、少しずつ大きくなっていきました。結局、孵化しないまま特設展は終了し、その後、事務所で観察を続けることにしました。
採集してから14日目の8月27日朝、卵のようすを見に行くと……カップの外で、小さい何かが動いています! パッと手を出し捕まえて見ると、なんと小さいカナヘビです! どうやら孵化したての子どものようです。カップに卵を入れてありましたが、フタは空気が入るよう軽く乗せただけだったため、わずかな隙間から外に出てしまったようです。あわててカップを確認すると、同じく小さいカナヘビがカップの中にじっとしています。同時に2匹が無事孵化しました。やはり、この卵はニホンカナヘビの卵で間違いなかったようです。
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プラスチックカップの中で孵化したニホンカナヘビ | 縦に亀裂が入った卵 |
大きさは大人の小指の第1関節ほどしかありませんが、おとなと同じ姿をしています。卵には縦に亀裂が入り、少ししぼんでいました。
カナヘビは昆虫食のため、えさはコオロギです。コオロギは水生物館でえさ用として繁殖させているものをわけてもらい、カナヘビの大きさに合わせて小さいサイズのものを与えています。
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カナヘビの頭に乗るほどの小さいコオロギ | 正門前管理事務所内の展示ケース |
みなさんにも見ていただこうと正門前横の管理事務所の窓辺に展示しています。外側からご覧になれます。隣にはヤモリもいますよ。カナヘビは小さいので見つけにくいと思いますが、来園した際にはぜひ見に来てくださいね。
〔井の頭自然文化園教育普及係 東條裕子〕
(2015年09月04日)