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2011年対馬体験ツアーに行ってきました
 └─2011/12/02

 現在、野生では80〜110頭ほどしか生息していないと推定されるツシマヤマネコ。井の頭自然文化園では、飼育下での繁殖に取り組むとともに、ツシマヤマネコを知ってもらうためのさまざまな普及活動をおこなっています。

 2011年10月15、16日には、小学4〜6年生を対象に「ヤマネコミニ講座」を開催しました。ツシマヤマネコの生態や現状を学んだ参加者から「ヤマネコへの手紙」を募集し、対馬市長賞に選ばれた4人の子どもたちが対馬に招待されることになりました。

 11月26〜27日にかけて、受賞者とともに「対馬体験ツアー」に参加してきましたので、その様子をお伝えします。

 対馬に到着後、まずは財部市長にお会いするため対馬の中心地「厳原」にある対馬市役所に向かいました。市長からひとりひとりに「対馬市長賞」の賞状を授与され、「東京に戻ったら家族や学校のみんなに、君たちが感じた対馬のことをしっかり伝えてください」とのお言葉をいただきました。

 昼食は対馬名物「ろくべえ」です。サツマイモのでん粉を固めて団子にしたものを、さらに水でもどし麺状にしたうどんのようなソバのような食べもの。手間のかかる工程のためか、対馬でも食べる人は少なくなってきているそうです。

 途中、烏帽子岳展望台へ登りました。日本有数のリアス式海岸である浅茅湾のおだやかな海と連なる山々が360度広がる景色は、まさに別世界。子どもたちもその美しさに惚れ惚れしていました。

 対馬野生生物保護センターでは、公開中のツシマヤマネコ「福馬」にご対面。子どもたちを歓迎するかのように寝小屋から出てきて、爪とぎ、オシッコ、毛づくろいなど、立て続けにさまざまな行動を見せてくれました。

 佐渡、奄美大島に次いで大きな島である対馬の移動手段はおもに自動車です。道路にはさまざまなタイプの「ヤマネコ注意」の道路標識が立てられていますが、残念なことに野生動物の交通事故はなくなりません。今回もナイトウォッチングの途中で、車と衝突し横たわっているツシマジカと遭遇し衝撃を受けました。人間の生活のためとはいえ、交通事故の犠牲になる野生動物に胸が痛みます。

 2日目は「舟志の森」を見学。ここでは地域の人々が、ネズミなどの食べ物となるどんぐりがなる木を植え、ヤマネコのための森づくりをしています。そしていよいよヤマネコの痕跡調査体験です。子どもたちは決められたルートを、フンや足跡などヤマネコが残した痕跡を探しながら歩いていきます。道路際に、毛がたくさん入ったヤマネコの糞を見つけました。サイズや形状、発見場所などを詳しく調査票に書き入れていきます。また、各所に設置されている自動撮影カメラのチェックもおこないました。カメラには、ヤマネコの姿こそなかったものの、ツシマジカやイノシシなどの姿がしっかりと確認できました。

 そのほか、三宇田浜散策や、廃校を利用した自然の森学校での昼食、万関橋見学、対馬の在来馬「対州馬」(たいしゅうば)の乗馬体験など、短期間で対馬の魅力を味わうための盛りだくさんな内容でした。

 この2日間で、ツシマヤマネコをとおして対馬の自然の豊かさや、そこにくらす人々のあたたかさをあらためて実感しました。参加した子どもたちは、初めて会う仲間と共に経験した旅で、多くのことを吸収してくれたことと思います。きっとこれから、市長から託された対馬の大使としての役目を果たしてくれることでしょう。

 今回受賞した子どもたち4人の「ヤマネコへの手紙」をご紹介します。

 ◎井上綾美さんの手紙(PDF、約61KB)
 ◎市川澄さんの手紙(PDF、約61KB)
 ◎立石裕愛さんの手紙(PDF、約49KB)
 ◎安藤沙倉さんの手紙(PDF、約53KB)

写真1:烏帽子岳展望台からの眺め
写真2:対馬野生生物保護センターで説明を受ける
写真3:「ヤマネコ飛び出し注意」の看板
写真4:自動撮影カメラをチェック
写真5:対州馬の乗馬体験

〔井の頭自然文化園教育普及係 高松美香子〕



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