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アオバトがカイツブリ展示場にデビュー
 └─2009/11/06

 みなさんは「アオバト」という鳥をごぞんじでしょうか? 漢字だと「青鳩」と書きます。文字から真っ青なハトを思い浮かべるかもしれませんが、実際は体全体がオリーブ色で、くちばしと眼の虹彩の内側がターコイズブルー、虹彩の外側がルビー色と、とても美しい体色をしています。オスの外観は少し異なり、頭から胸までが黄色、腹はクリーム色、翼の一部がワインレッド色をしています。全長は約33センチで、キジバトとほぼ同じ大きさです。

 この鳥の大きな特徴は「海水を飲む」こと。野生ではふだん森林に住み、海水を飲みに海岸へ往復する行動が観察されています。海水を飲む理由はおそらく、塩分やミネラル補給のためと考えられていますが、くわしいことはわかっていないようです。鳴き声も独特で、オスは繁殖期になると「オーアーオー」「アオウアオー」ともの悲しげな声で鳴きます。

 過去の記録を見ると、井の頭自然文化園での展示は1988年が最後なので、実に20年ぶりの展示です。今回、展示したメスのアオバトは、神奈川県の大磯で弱って海につかっていたところを保護されました。海水を飲むために磯へ降りたとき、高波にのまれてしまったのかもしれません。

 動物病院に収容されたときは、左翼の一部が折れてしまっていました。この部分を断翼処置したため、残念ながら飛ぶことができません。検疫中のようすを獣医師に確認すると、元気で食欲もあるとのことでした。

 さて、問題はどこの展示場に出すかです。他の鳥との相性や展示場の植栽などを検討し、カイツブリの展示場に入れることにしました。1か月ほど経って検疫が終わった2009年10月17日、展示場に出したところ、すぐ茂みに隠れてしまいました。

 次の日、ようすを見に行くと、一時的に隠れるための箱に移動していました。この日は餌を食べるところを観察することはできませんでしたが、その翌日には採餌を確認。一安心しました。先住のカイツブリたちは、とつぜん現れた新参者を気にしているようすはなく、あいかわらず池に浮いてのんびりしています。

 展示開始後3週間ほど経った今、アオバトは展示場の向かって右側が気に入ったらしく、一日中その辺りで行動しています。晴れの日は岩の上で日光浴もしており、陽の光があたると体色がとてもきれいに見えます。

 また、枝伝いに登っているのでしょう。地面から約 140センチの高さの枝で休息している姿も見られるようになりました。徐々に行動範囲を広げているようです。段々寒くなってきましたが、天気のよい日にはぜひ、陽にあたって気もちよさそうにしているアオバトを井の頭自然文化園でごらんください。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 川手美咲〕

(2009年11月06日)



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