ニュース
トビハゼ繁殖期始まる
 └─葛西  2008/06/27

 葛西臨海水族園「東京の海」の泥干潟水槽では、トビハゼを展示しています。野外のトビハゼの繁殖期は6月の中旬から8月で、水槽内のトビハゼも繁殖期を迎え、体色が変化したり、腹部が大きくなってきました。

 観察していたところ、2008年6月18日からオスの求愛行動が始まりました。繁殖の準備が整ったオスの体色は、ふだんより明るい色に変わります。そして、垂直にジャンプをしたり、尻ふりダンスと呼ばれる、尾びれをくねらせる独特な行動をしたりして、メスを自分の巣穴へ誘います。巣穴へ誘う理由は、産卵が巣穴の中でおこなわれるからです。

 泥の表面を観察して見ると、ところどころに穴が開いています。この穴はトビハゼの巣の入口で、深さは30センチ前後。入口はいくつかあり、産卵は巣穴の一番奥でおこなわれます。

 オスにとって産卵場所である巣穴はとても大切で、巣穴から半径20~30センチの範囲になわばりをつくり、侵入者を排除します。ほかの魚や、ときには自分よりも大きなヤマトオサガニまでを相手にして闘い、追い出すようすが観察できます。

 ある日、求愛行動をしていたオスを観察していたところ、みずから巣穴へ入って行き(写真上→写真中)、オスのあとをついてきたお腹の大きなメスもつづいて巣穴へ入って行きました(写真下)。

 これでめでたく産卵か?と思ったのですが、世の中そうあまくはありません。実際に雄雌がいっしょに巣穴に入るところまではよく観察できるのですが、メスがすぐ巣穴から出てきたり、うまく産卵までたどりつくことはとても少ないのです。きっとメスにとっては巣穴のつくりやタイミングなど、さまざまな条件があるのでしょう。

 繁殖期の時期のトビハゼ水槽は、ふだんより干潟の部分が干上がる時間を増やしてあるので、魚どうしのなわばり争いや繁殖行動など、ふだんより活発な行動が見やすくなっています。みなさんも注意して観察すれば、水槽内のトビハゼの求愛行動を見ることができるかもしれませんよ。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 橋本浩史〕

※人工なぎさのトビハゼの行動を撮影した動画は、こちらの記事をどうぞ。

(2008年06月27日)



ページトップへ