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絶滅危惧雑草、ミズアオイ
 └─葛西  2007/09/29

 秋になり、葛西臨海水族園の「田んぼ」水槽の稲も実り始めました。水槽の水路部のトチカガミが白い花を咲かせています。また、あぜの脇では花芽が20~30センチほど立ち上がり、青紫色の花が咲いています。これがミズアオイです。一見、ホテイアオイに似ていますが、ホテイアオイとミズアオイは同じミズアオイ科の植物で、ホテイアオイは外来種の浮遊植物です。

 ミズアオイは水路や水田といった浅い水域で土に根をおろして育ちます。冬に枯れてしまう一年草ですが、7~10月のちょうどこの時期に青紫色の花を咲かせ、種を残すのです。

 きれいなミズアオイですが、気むずかしい一面もあります。ある年にたくさん群生していても、翌年には出てこなくなったり、また逆に何かのきっかけで土の中の種が発芽し、群生したりすることもあります。ミズアオイが種から発芽するためには適度なかく乱(土のかきまわし)や水温の上昇など、いくつかの条件が必要なようです。

 「田んぼ」水槽には2007年7月、試験的に3株植えました。その後、順調に成長し、9月21日から青紫色の花を咲かせてくれるようになりました。残念ながら、ミズアオイの花は1~2日で終わってしまいます。でも、一つの花芽にいくつかの花(6~50個)がついているので、しばらくは花を楽しめると思います。

 ミズアオイにかぎらず、水田の雑草には絶滅危惧種が少なくありません。かつての水田環境が、乾田化や河川や水路の改修、除草剤などの使用により大きく変化してしまったからです。ミズアオイは環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧種II類に指定されていて、100年後の絶滅確率がほぼ100%とも言われています。せめて水族園では、ミズアオイの花を毎年みなさんに見てもらいたいと思います。

写真上:ミズアオイ
写真下:トチカガミ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 橋本浩史〕

(2007年09月28日)



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